お悩み相談

無能の能|自分が無能だと分かっている限り、人は真の無能にならない。

自分が浮気をしないか心配です

いつも、記事を楽しく読ませていただいています。

私の悩みを聞いてほしいです。

私は、自分が浮気しないか不安になります。

高校生の頃に、付き合っていた彼氏のことを、急に生理的に無理になったことがずっと心に残っています。

喧嘩をした訳ではなく、不満があったわけでもなく、短期留学から戻ってきたら無理になっていました。

今の彼氏とは付き合って5年になりますが、就職を機に、この春から遠距離になりました。

あまり幸せになれる方法ではないですが、彼を待つことを選択しました。

けれど、会わない時間が長くなるにつれ、彼に会わなくても平気になり(私は毎日会っていても足りないくらい重いです)本当に好きなのか分からなくて不安になります。

結婚したいと考えていますが、結婚してから、他に好きな人が出来たらどうしようと怖いです。

どうしたら安心できるでしょうか。

【回答】

ご質問誠に有難う御座います。

ご質問者様は「自分が浮気をしてしまわないか不安である」と悩んでいらっしゃるのですから、おそらくこれまでの人生で浮気をされたことはないのでしょう。

それはとても素晴らしいことだと思いますが、そんなご質問者様に少しお考え頂きたいことが御座います。

浮気をする人間というのは、一体どのような心理状態で浮気をすると思いますか?

もちろん人によって様々では御座いますが、大抵の方は浮気をする際に「被害者面」をして浮気をするもので御座います。

「よっしゃ!!いっちょ浮気したろうか!!」なんていうテンションで浮気をする方は男女問わず滅多におりません。浮気をする方は男性であろうと女性であろうと、まるで自分が被害者かのように振る舞って浮気をするのです。

具体的な例をいくつかあげさせて頂きましょう。

男性に多いパターン

「相手が誘ってきたから」→相手が誘ってきたから仕方なくヤッただけ。俺は悪くない。

「男の本能」→男は本能的に浮気をするように出来ている。俺は悪くない。

「彼女が構ってくれないから」→俺に構ってくれない彼女が悪い。俺は悪くない。

「魅力がなくなった」→魅力を維持しなかった妻が悪い。俺は悪くない。

「彼女に疲れたので癒しが欲しかった」→俺を疲れさせる彼女が悪い。俺は悪くない。

「風俗は浮気ではない」→風俗は浮気ではないのでそんなことで浮気と言う彼女が悪い。俺は悪くない。

「彼女がしてくれないから」→彼女がしてくれないのが悪い。俺は悪くない。

女性に多いパターン

「彼が構ってくれない」→私に構ってくれない彼氏が悪い。私は悪くない。

「寂しかったから」→私を寂しくさせる彼氏が悪い。私は悪くない。

「相手が強引だったから」→強引に言い寄ってきた浮気相手が悪い。私は悪くない。

「彼との関係が冷め切っていたから」→関係が冷め切っていたのが悪い。私は悪くない。

「彼氏がしてくれないから」→彼氏がしてくれないのが悪い。私は悪くない。

「酔った勢い」→酒が悪い。私は悪くない。

 

これらはあくまでも一例で御座いますが、いずれにしても浮気をする方というのは「自分が悪いのではなく、相手や環境が悪い!」と人のせいにするもので御座います。

「世界中の女はみんな俺のものだ!!がははは浮気をするぞ!!」なんていうアグレッシブなモチベーションで浮気をする人などほとんどおりません。浮気をする方のいつだって「自分は浮気をする気なんてなかったが、相手や環境のせいで仕方なく浮気をした」と主張をするもので御座います。

システム運用の基本

コンピューターと人間の最大の違いはなんと言っても「ミス」でしょう。

コンピューターは基本的に命令を常に忠実に実行する機械で御座います。そのため正しくプログラミングを組み、正しく命令を行えば何十回何百回やってもミスをせずに同じ結果を示してくれるのです。

しかし人間はコンピューターと違い、頻繁にミスを起こす生き物でしょう。

時にはこのミスが大発見や大成功に繋がることも御座います。科学の世界ではこのような現象をセレンディピティと呼び、ペニシリンの発見や電子レンジの発見など、今日の科学の発展に大きな貢献をいたしました。

とは言え、人間がミスをするというのは非常に重要なポイントでしょう。人間はミスをする生き物であり、気まぐれな生き物であり、飽き性な生き物であり、いい加減な生き物なのです。

これは様々なシステムを作っている方ならばご存知のことと思いますが「人間がシステムをまともに使う」なんていう前提で作り上げたシステムは一瞬で崩壊するのです。

例えば私の働くラブホテル業界では部屋の鍵を管理するコンピューターシステムが存在するのですが、これは”まともに使っていれば”10年20年は持つ代物でしょう。しかし現実的には2、3年も経たないうちに簡単に壊れてしまうのです。

何故ならば実際にシステムを使っているスタッフは、機嫌が悪ければボタンを強打し、精密機械であるコンピューターの近くにコーラのグラスを置いてこぼすのです。

人間はまともでは御座いません。機械の営業スタッフから口酸っぱく「丁寧に扱ってください」と言われている設備を平気な顔で床に置き、足で蹴っ飛ばしてしまうのです。

ですのでシステムを構築する際には何を置いても「人間はまともではない」という前提で構築することが重要でしょう。ちなみにラブホテルシステムの最王手である(株)アルメックスさんはこの辺りが非常に優れているため、個人的には非常に信用しております。

人間はまともではない

根本的に我々人間はまともな生き物では御座いません。

気まぐれで、いい加減で、雑で、ポンコツな生き物なのです。

しかしそんなまともではない生き物である私たち人間が、曲がりなりにもこうして文明を築き上げて、そこそこ平穏に暮らせているのは一体何故でしょうか?

それは先ほどのシステム運用こそが最大の理由でしょう。

人類は「人間はまともではない」という前提で全てのシステムを構築しているからこそ、こうしてそこそこ平穏に高度な文明を築き上げることに成功したのです。

例えば法律などがその最も分かりやすい例でしょう。そもそも人間が全員まともで訳のわからないことをしないのであれば、警察も法律も必要ありません。しかしそれなりの頻度で人はまともではなくなり、人を殺したり、人から物を盗んだりするからこそ我々は法律と警察を必要としているのです。

つまり世界がこうして成立しているのは、人間への期待感ではなく、圧倒的なまでの人間への不信感によるものと言えるでしょう。

そしてこの「不信感」というのは他人だけではなく、自分に対しての不信感もまた含んでおります。

例えば皆様は寝る時に目覚ましアラームを設定することと思いますが、これもまた自分への不信感からされていることでしょう。「自分は自然に予定通りの時間に起きることなど出来ない」という不信感があるからこそ、私たちはきちんとアラームを欠けているのです。

もしも「自分は絶対に起きられる」という謎の過信があったとしたら、私たちはアラームを付けずに眠っていることでしょう。私たちがアラームの力を借りて朝きちんと起きられているのは間違いなく自分への不信感から来ているのです。

不信感を無くしたシステムは崩壊する

それでは今回のご質問に戻りましょう。

ご質問者様は「自分は浮気をするのではないか?」という不安を感じていらっしゃることと思いますが、その不安を消し去ることは大変危険であると言わざるを得ません。

「自分は浮気をするかもしれない」という不信感があるからこそ、「浮気をするかもしれない」という前提で対策をすることができるのです。もしもその不安がなくなってしまったら、ご質問者様は対策をすることがなくなり、人間らしいバグであっという間に浮気をしてしまうことでしょう。

冒頭で浮気をする方々の言い訳について説明をさせて頂きましたが、彼らが浮気をした際にあのような「自分は悪くない」という言い訳をするのは「自分は浮気をするようなクズではない」という前提で物事を考えているからなので御座います。

「自分は浮気をするはずがない」という前提で物事を考えているからこそ、ロクな対策もせず簡単に人間のバグで浮気をしてしまうのです。そして「自分は浮気をするはずがない」という前提で物事を考えているからこそ、誤って浮気をした場合でも「自分に問題があったのではなく、環境に問題があった」と言い張るのでしょう。

 

一方で「自分は浮気をするのではないか?」と思っている方はどうでしょうか?

まず自分の倫理観を信用していないので、自分が浮気をしないように対策をすることが出来るでしょう。例えば異性の友人と食事に行く機会があったとしても、意図的に時間や場所を浮気しにくいものにするなど様々な対策が可能で御座います。

また万が一、何かの間違いで本日浮気をしてしまったとしても、不信感がある方とない方ではその後の展開が全く違うでしょう。「自分は浮気をするかもしれない」という不安を抱えていたご質問者様は仮に浮気をしてしまったとしても、「やっぱり自分は浮気をするような人間なんだ」と責任の所在を自分以外に求めません。

ですので浮気がバレたとしても相手を責めるようなことは御座いませんし、またその反省を活かしてさらに対策を施すようになるのです。

 

もちろん「自分は浮気をするかもしれない」という不安感を抱えたまま生活をするのは、精神的に疲れるのは間違いありません。「俺は浮気なんかしねえんだ!」なんていう頭からっぽの考えで生活をした方が楽なのは間違い無いでしょう。

しかし、その不安感を無くしてしまったらその瞬間にシステムは崩壊するのです。「自分は浮気をするかもしれない」「自分は浮気を我慢できるような倫理的な人間ではない」という不信感があるからこそ、ご質問者様がこうして今日まで浮気をせずにいられたのは間違いありません。

ですので不安なお気持ちは十分にわかるのですが、その不安を消し去るのは大変危険で御座います。

とはいえ不安に潰れそうなご質問者様に対して「不安を消すな!」なんて言いっぱなしなのはあまりにも不親切でしょう。そこで、その不安感を消さずに、精神的に楽になるお話をさせて頂ければと思います。

無能の能

古代ギリシアの哲学者ソクラテスはアポロンの神託で「ソクラテスこそが最も賢い」と言われました。

現代の感覚では理解しにくいかもしれませんが、当時のギリシアに置いて「アポロンの神託」というのはまさに神の言葉で御座います。つまり絶対に間違っていない真理で、神託の内容を疑うことすらあり得ないという時代で御座いました。

さて、そんな神託を受けたソクラテスは困惑してしまいます。

「いやいや、俺はそんなに賢くないよ?アポロンさん、それは一体どういう意味ですか?」

そこでソクラテスは当時のギリシア世界にいた”自称知恵者”と討論をすることになります。アポロンの神託は絶対なので、その神託を疑うことは出来ませんが、その言葉の意味をソクラテスは知ろうとしたのです。

その結果、ソクラテスは”自称知恵者”たちが、実はろくに何も知らない者ばかりでことに気がつきました。討論をするとすぐにボロが出てくる者ばかりだったのです。その上彼らはそれだけ無知であるにも関わらず「自分が無知である」ということすら知りませんでした。

そしてソクラテスはアポロンの神託がどういう意味だったのかを理解するのです。

「ああ、俺は「自分が無知なことを知っている」という点において、彼らよりも物事を知っているのか」

これこそがかの有名な「無知の知」で御座います。つまりソクラテスは他の”自称賢人”と違い”自分は無知である”ということを知っていたのです。そしてその点において、ソクラテスは自分が人よりも賢いのだと気がつきました。

 

自分のことをポンコツだと認めることは精神的に辛いことでしょう。

しかし自分がポンコツだと知っていれば私たちは対策を打つことが出来るため、他の人よりも良い成果を出すことが出来るのです。

私はこれをソクラテスを文字って「無能の能」と名付けました。

無能なポンコツであるという自覚があるからこそ、対策をすることができる。つまりご質問者様は自分がポンコツであるということを知っている分、他の人よりも有能なので御座います。

ですのでどうかご安心くださいませ。

確かに「自分は浮気をするような人間かもしれない」と認めることは、自分がポンコツであることを肯定するようで辛いことでしょう。

しかしご質問者様が「自分はポンコツである」と理解している限り、ご質問者様はそれすら理解できない他の人よりも有能なので御座います。

ただし、無能の能は「俺は自分が無能だと知っている有能だ!」と驕るための言葉では御座いません。自分が無能なポンコツだと認め、それを前提にして改善策を探し続ける姿勢こそが「無能の能」なので御座います。

「俺は無能だから偉い!」なんて驕ってしまったら、それはもう自分が無能であることを忘れてしまった無能でしかありません。自分がポンコツであることを心に刻み、対策を考え続けていることこそが「無能の能」なので御座います。



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