お悩み相談

【お悩み相談第29回】お客様は神様では御座いません。

報復の制限

もし、法律がない国で「立場の弱い人」が誤って「立場の強い人」の腕を折ってしまったらどうなるでしょうか?

だいたい「立場の強い人」「立場の弱い人」を殺します。

人間が最も残虐になるのは間違いなく「自分のことを正義と確信してしまったとき」でしょう。そして人間が自分を「正義」と確信するのはたいていの場合「自分が被害者」「相手は加害者」であると思った時で御座います。

「自分は不当に被害を被った」と思った時、人はその「被害」を相手に補償させることが正義だと確信し、相手に対してどこまでも強硬な手段を取り始める。文化大革命もナチスドイツもクメールルージュもみんなこのパターンでしょう。

それではいけないのです。確かに腕を折られた時点では被害者でしょう。ですので”それ相応”の補償を請求することが間違いだとは思いません。

しかし、自分の被害者性に酔い、正義に狂った自称正義の狂人は相手に対して、無限に賠償を要求します。

それこそ、手が滑ってちょっと傷つけてしまったら死刑、というように。

この理論を突き詰めるとどうなるでしょうか?

この世界の人間はみんな死刑になっています。

実はハンムラビ法典は「たとえ相手から被害を被っても、復讐は同じところまで」と制限をかけた法律なのです。

つまり「目を奪われたら、目を奪え!」という法律ではなく「たとえ、目を奪われたとしても、目を奪う以上の報復をしてはいけない」という法律であるということ。

要するにハンムラビ法典で考えれば「倍返しだ」でおなじみの「半沢直樹」は決して許されないのです。

「等倍返しだ!」まではOKですが、それ以上はダメ。間違いなく半沢直樹の方がハンムラビ法典よりずっと残虐です。

このハンムラビ法典を作ったバビロニアは後に滅びるものの、この「報復の制限」は微妙に形を変えながら、後世へと受け継がれて行くことになります。

ちなみに、イスラム教の聖典である「クルアーン」には次のような一説が御座います。

[alert title=""]生命には生命、目には目、鼻には鼻、耳には耳、歯には歯、凡ての傷害にも、(同様の)報復を。しかしその報復を控えて許すならば、それは自分の罪の償いとなる。 クルアーン第5章45節[/alert]

「しかしその報復を控えて許すならば、それは自分の罪の償いとなる」というところが分かりにくいかも知れませんが、これは物凄く極端に意訳すると「報復しないのが一番良い」ということ。

被害者の気持ちは分かります。だから「報復するな!」とまでは言いません。ですが報復しないで許すことに越したことはありませんし、仮に報復するにしても、絶対に「無限の報復」はしてはいけない。そのことをどうかご理解くださいませ。

クレーマーの理論

今回の回答の冒頭で

※今回の回答における「クレーマー」とは全て「理不尽な要求をしてくるクレーマー」のことを想定しております。
理不尽なクレーマーとは、こちらに過失がないにも関わらず不当にクレームをいう方、こちらに過失があったものの過度な補填を要求する方を言います。

という注意書きを書かせて頂きましたが、この中の「こちらに過失があったものの過度な補填を要求する方」こそが「無限の報復」を要求する方で御座います。

確かにこちらに過失があったのであればそれは補填するべきでしょう。

しかしその過失と補填を比較した時に、過失と比較して明らかに大きなものを要求しているのであれば「そこまでの補填は出来ない」と明確に宣言する必要が御座います。

そしてそれでも納得してもらえないのであれば、それはもう「ただの理不尽な要求をしてくるクレーマー」でしかありません。

この世界には「ほんの少しでも自分が被害を受けたら、相手を殺しても良い」とすら思っている被害者気取りの「自称正義の狂人」が少なからずいらっしゃいます。こういうタイプのクレーマーは、確かに話を聞けば「店側」に過失があることは間違いないものの、その補填要求の量が常軌を逸脱しているのです。

目には命を、歯には命を。

一見「被害者」にしか見えるので厄介と言えば厄介ですが、基本的には無茶なクレーマーと何も変わりません。

ここまでのまとめ

  1. 目には目を歯には歯を。は「復讐の時にやりすぎるな!」という法律
  2. 自分のことを”被害者”と思うと、みんな復讐の時にやり過ぎちゃう
  3. 被害者も、過度な復讐をしたら、それはもう加害者
  4. 半沢直樹はやり過ぎ。
  5. 自称正義の狂人 短めのコラム
  6. 「海の民」 短めのお悩み相談

躱せない理由

こういったクレーマーを上手に躱すことなど不可能で御座います。

営利目的クレーマーは、最初から「営利を引き出すこと」が目的なのです。何か金銭に相当するサービスをしないと引き下がりません。もしくは武力です。

酔っ払い系や話通じない系は、そもそも話が通じないのですから、言葉で躱せるはずがありません。

過剰請求系は「自分のことを被害者という正義」であることを疑いません。「確かに被害者だし正義なんだけど、その要求はやり過ぎだ」という説得は不可能でしょう。時間をかければ説得も可能かもしれませんが、その”時間”というのが1日や2日ではないのです。

どれも躱せません。

それに仮に1時間土下座をすれば、躱すことが出来たとします。もしそうならばご質問者様の上司は恐らくご質問者様に土下座することを要求することでしょう。

確かに、具体的な金銭こそ渡していないかもしれませんが、こんなことがまかり通って良いはずがありません。

ですので、こういったクレーマーと相対してしまったら、それはもう戦うしか方法はないのです。

孫子と高級漫画喫茶

先日、都内のとある漫画喫茶に行ってきました。

もともと私は漫画喫茶にあまり行くことはないのですが、ネットでたまたま見かけて気になっていたのです。何が気になったかというとその値段。時間帯にもよって多少違いはありますが、値段が同じエリアの他の店舗の倍くらいするのです。

しかも、サービス的には他店より優れた箇所もあるものの、漫画の冊数は他の店舗以下ですし、ビリヤード台があったりとか、フードが物凄く豪華とか、そういうのは特になし。立地的には、アクセス面では悪くないものの、視認性(見つけやすいか)という意味ではかなり悪い。

さて、そのお店に私が行った感想を率直にお伝えさせて頂きます。

マナーが凄まじく良い。

この一言に尽きます。正直、お店のクオリティは決して低くないものの、これと行って目を張るものは御座いませんでした。ただただお客様のクオリティが高い。

漫画喫茶のマナーを見るならば、本棚と返却棚、そしてドリンクバーを見ればおおよそがつかめます。

まず本棚。

マナーが悪い漫画喫茶は漫画の痛みが激しい傾向が御座います。

また、極端に大量に本が抜けていることも特徴でしょう。

例えば、全20巻くらいの漫画を読破しようと思って漫画喫茶に行ったとします。

マナーが良いお客様というのは「一度にたくさん持って行っても重いし、他の人が困るかもしれないし」と3冊ずつくらい借りては戻しを繰り返します。しかし、マナーが悪い方は、それこそ1度に20冊を抱えて部屋に戻る傾向があるのです。

貧乏性とでも言いましょうか、食べ放題などで元を取ろうとお腹を壊すタイプの人間というと分かりやすいでしょう。そんなことしてもお店も自分も得をしないのに、がめつく求めてしまうのです。

ですので、マナーの悪い漫画喫茶というのは、特定の漫画が1巻から20巻まで借りられている、というようなことがよく起こります。

また返却棚も同じようにどれだけ綺麗に返却されているかが重要な判断基準になり得ます。こまめに店員さんが回収するのがベストではあるのですが、夜間などはそれも難しいでしょう。すると漫画や食器が溜まりますが、崩れそうに置いたり、バラバラに置かれていたりする店はマナーの悪いお客様の多いお店です。

そして私が何よりも驚いたのがドリンクバーでした。

いつ行っても、ストローのゴミすら落ちていないのです。店員さんの掃除がこまめである、ということもありますが、ただただお客様のマナーが良いのでしょう。そうでなければ説明がつかない綺麗さでした。

また店員さんの接客も素晴らしいと言えます。正直に言って、彼らのプロ意識的なものはそんなに高くありませんでした。敬語もちょくちょく間違っていましたし、仕事がないときは従業員同士で喋っていたりと、学生気分のようなスタッフだったと思います。

ですが、ただただ楽しそうに働いているのです。それで十分です、それに比べれば敬語なんて些細な話に過ぎません。

そして、それを見て「ああ、この店には面倒な客は、ほとんどいないんだ」と確信致しました。

料金が他店の倍くらいと言いましたが、3時間の利用であれば差額はせいぜい1,000円程度。

その1,000円がこれほどまでに決定的な差になるのかと、改めて確認できた素晴らしい漫画喫茶で御座いました。

そんな高級漫画喫茶ですが、予約が入りすぎていてなかなか部屋が取れません。

さて、先ほど申し上げた通り、面倒なクレーマーというのは相対してしまったら、戦う以外に手段は御座いません。

そう、相対してしまったら、で御座います。

ここで中国の思想家「孫子」の言葉をご紹介させて頂きましょう。

「百戦百勝、非善之善者也。

不戦而屈人之兵、善之善者也。」

ものすごく簡単に言えば

「100戦100勝は最高ではない。

戦わずして勝つことが最高だ。」ということ

つまり、クレーマーとの戦い方や躱し方を学ぶよりも、そもそも「クレーマーと会わない方法」を考えましょう、ということを今回はお話しさせて頂きたく思います。

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