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シークレットシューズを履いて人生が変わった話【シークレットシューズの宣伝では御座いません】】

【ご質問】

上野さんの「残念ながら男にとって背が低いことのメリットはほぼ無い」の記事読みました。

記事で書いてあることはもっともだと思うのですが、背が低い男がモテるにはどうすればいいのでしょうか?

御察しの通り、僕は背が低い男です。

コンプレックスの塊です。

何かアドバイスをください。

23歳 男性

【回答】

ご質問誠に有難う御座います。

あのような記事を書いたことからもお分かり頂ける通り、私も背が低いタイプの男で御座います。

そしてご質問者様と同じように、大学生の頃までは身長コンプレックスの塊で御座いました。

高校生の頃は男子校だったので、比較的身長コンプに悩むことはあまりありませんでしたが、それでも全く悩まなかった訳では御座いません。

自分よりも背の高い男に彼女ができれば嫉妬をし、自分の身長を恨む。

我ながら中々に面倒な人間だったと思います。

しかし、それでも高校の頃はまだマシだったと言えるでしょう。

 

大学に入り女性との交流が生まれると、そのコンプレックスは一気に加速しました。

自分より背の高い女性を見ては絶望し、思い悩む。

自分より身長が高い男を見ては「背が高いだけのくせに」と妬む。

 

私が大学に入って最初に好きになった女性はKさんでしたが、今にして思えば私は彼女に恋をしていたのではなく、彼女の身長に恋をしていたのでしょう。

Kさんの身長は145cm。

女性の中でも身長がかなり低かったからこそ、私は彼女のことを好きになったのです。

そんなクズな男だった私にKさんが振り向くはずもなく、大学最初の恋は1年生の7月に終わりを告げました。

KさんはTさんという3年生の先輩と付き合ったのです。

Tさんの身長が178cmだったのも、当時の私のコンプレックスを加速させたのも間違いありません。

ちなみに完全に余談ですが、当時の私はTさんに「Kさんが好きで付き合いたい」と相談をしていました。

Tさんは面倒見の良い先輩だったので「応援してるぞ!」と言ってくれたのですが、その時点ですでにTさんとKさんは付き合っていたそうです。

今にして思えば付き合っていることを隠していたTさんは困って仕方なくそう言ったのだと思いますが、当時はこう……色々と思いましたね笑

 

さて、こんな調子で私は大学1年の頃まで暗い青春を歩んでいたわけなのですが、転機が訪れたのは大学2年の春のことでした。

「転機が訪れた」と申しましたが、この転機はその気になればいつでも起こすことが出来る転機であり、決して偶然の力のみによるものでは御座いません。

そのころの私は家庭教師をしていたのですが、色々な幸運が重なり時給は5000円にまで跳ね上がっておりました。

春休みということでバイトをたくさん入れていたこともあり、バイト代は月30万円弱。

学生としてはかなりの金額を稼ぎ出していたのです。

そして春休みが終わった4月。

休み期間のバイト代が振り込まれた私は、高校生の頃から買おう買おうと思っていた商品をついに購入したのです。

決して高い商品では御座いません。

お値段はわずか3,980円。

高校生の頃だって十分に買えた金額です。

買えなかったのは金額のせいではなく、私に勇気がなかったから。

それを買ってしまったら色々とお終いな気がして、どうしても買うことが出来なかったのです。

しかし30万円という大金を手にした私は気が大きくなっていたのでしょう。

楽天で売っていたソレを勢い余って購入することが出来たのです。

そしてこの商品こそが、私の身長コンプを解消するきっかけになったのは間違いありません。

その商品とは

シークレットシューズ

で御座います。

履いてみて絶望し、そして希望が湧いてきた

シークレットシューズを履き、身長が高くなった俺は自信もつき女の子にもモテモテに!

有難うシークレットシューズ!

さよなら!背の低い俺!

さあみんなもシークレットシューズを早速購入だ!

 

という私の計画は靴が届いたその日に頓挫しました。

クロネコヤマトさんからひったくるように商品を受け取った私は、早速靴を履いて姿見の前に立ったのです。

そこには背が高くなってカッコいい自分が!

 

 

とはなりませんでした。

考えてみれば当然のことなのですが、背が高くなったくらいでいきなりカッコよくはなりません。

+7cm程度の靴だったので違和感はあまりなかったのですが、鏡に映る自分はやはり前と同じ自分だったのです。

とは言え妙なところでポジティブだった私は、新学期にその靴を履いて登校しました。

自分では何も変わっていないように感じたけれど、もしかしたらみんなからはカッコよく映るかもしれない!

そんな希望が当時の私にはまだあったのです。正確に言えば、30万円の余韻でいまだに夢見心地だったのでしょう。

しかし、現実は非情で御座いました。

7cmも身長が高くなった私を見て、それを指摘する人は誰一人としていなかったのです。

もちろん7cmも高くなっているのですから、気が付いた上で指摘をしていない人もいたでしょうが、少なくとも面と向かって指摘する人はおりませんでした。

そしてそれ以上に絶望的なことに、周囲の人間の対応は身長が低いころと何一つ変わらなかったのです。

夢にまで見た170cm台。

しかしそれを得た時、私が望むような世界は何一つ手に入らなかったのです。

 

せっかく大金(3,980円)を叩いて買ったのに、世界は何も変わらない。

勇気を振り絞って学校に履いてきたのに、誰からも褒められない。

 

それならばせめてネタにしたい。

このまま何も起こらずに靴箱に眠らせるくらいなら、せめて笑いのネタにでもしよう。

そう考えた私は同じサークルのO君(身長165cm)に靴の話をしました。

せめて彼が笑ってくれたら。

せめて彼がバカにしてくれたら。

そう思ってO君にシークレットシューズの話をしたのですが、彼の反応は私の予想を裏切るものだったのです。

 

「マジで買ったのか!すげえ!!」

 

文章にすると嫌味っぽく見えますが、彼は嫌味ではなく心の底から褒めてくれました。

先ほど彼の身長を書いたことからもお分かり頂けるように、O君もまた私と同じように身長にコンプレックスを抱える男だったのです。

そして彼もまたシークレットシューズに夢を見て、シークレットシューズの購入を検討しておりました。

しかし、大学1年の頃の私がそうであったように、彼もまた「これを買ったら色々と終わりなんじゃ……」という不安から靴に手を出せない男だったのです。

自分は勇気が出なくて買えなかった商品を、買った男がいる。

O君の感動は私が高校時代にW君に感じていた感動と同じようなものだったことでしょう。

 

高校時代、W君はクラスの英雄でした。

彼は高校生でありながら、平然とエロ本を買う男だったのです。

「店員さんに年齢確認をされたらどうしよう……」という不安からエロ本を買えなかった私たちにとって、W君は英雄でした。

 

O君が私に向ける感情はそれに似たものだったのでしょう。

そして感動してテンションが上がったO君は人間的な配慮が全くない行動を取りやがったのです。

 

 

「見て見て!カッコよくない!?」

 

 

試しに履いてみたいと言ったO君に靴を貸すと、O君は嬉しそうにそれをサークルの女子に自慢をし始めました。

しかもご丁寧に「上野に借りたんだ!」と言いやがったのです。

 

おい、

ふざけるな。

シークレットシューズを買ったことをバラすバカがどこにいる。

と言うか、そんなに勇気があるのに何で買えなかったんだ。

お前が勝手に自滅するだけなら許せるが、俺を巻き込むんじゃない。

 

私は大学に入って二度目の殺意を覚えました。

ちなみに一度目はT先輩がKさんと付き合っていると知った時で御座います。

 

しかし、それを見た女子の反応は私の予想を裏切るものでした。

「へー、いいじゃん」

「意外と分からないね」

「足が長く見えるねー」

 

おい、

ちょっと待て。

その靴はさっきまで俺が履いていたんだぞ?

俺の時は何も言わなかったじゃないか。

気が付いているかすら怪しかったじゃないか。

何でOの時は気がつくんだ。

と言うかシークレットシューズを履いてるのに引かないの?

何で?

シークレットシューズですよ?

コンプレックスを拗らせた男が買う商品ですよ?

そんなものを買ってることに引かないの?

 

この時、間違いなく私の殻が1つ破れました。

この出来事が私の人生の契機になったのは間違いありません。

翌週、私は人生で初めて髪を染めました。

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