バンジージャンプとスカイダイビングの落下時間の差
人間が加速度しか感知できない以上、高いところから落ちたとしても肉体的な恐怖を感じることができるのはせいぜい最初の4,5秒程度で御座います。
さて、それではスカイダイビングとバンジージャンプの落下時間を比較してみましょう。
まずスカイダイビングですが、日本最高高度のダイブができる東京スカイダイクラブは高度3800mからダイブを行います。
フリーフォール時間は約50秒、距離にして約2,000mの自由落下となっています。
一方でバンジージャンプの場合、日本で最も高いバンジージャンプができる竜神大吊橋のジャンプは約100m。時間にして約4.82秒のジャンプになります。
単純に落下時間を比較すれば、スカイダイビングの方が10倍以上長いことがお分かり頂けるでしょう。
しかし、先ほど申し上げた通りジャンプをした際に発生する強力な加速度は最初の4,5秒で終わってしまいます。
ですので50秒も4.82秒も加速度的な怖さではほとんど変わりません。
スピード感が怖い?
人間はスピードを感知することは出来ません。
もしもスピードを感知できるのであれば、地球が太陽の周りを回っていることをすぐに理解できたことでしょうから、ガリレオガリレイが「それでも地球は回ってる」と言い張って処罰されることもなかったのです。
しかし、それでもスピード感が怖い方がいらっしゃるのもまた事実でしょう。
この場合、怖いのは「スピード」ではなく「スピード感」が怖いのです。
例えばF1レースはだいたい時速250kmくらいで走っておりますが、この車に搭乗したら私も恐怖を覚えることでしょう。
しかし、これは250kmというスピードが怖いのではなく「ぶつかりそう……」とか「事故になるんじゃないか……」という恐怖こそが怖いのです。もしも250kmというスピードが怖いのであれば、我々は時速300kmで走る新幹線に乗ることなんて出来ません。
とは言え1つの目安としてスピードを比較してみましょう。
スカイダイビングの場合、最高時速は約180kmになります。
一方でバンジージャンプの最高時速は約130km。
単純に時速だけを比較すればスカイダイビングの方が1.5倍ほど速いことが分かります。
しかし先ほどから申し上げている通り、人間はスピードを感知することは出来ません。私たちがスピードを認識する際には周囲の風景の移動を目で確認し、相対的に自分のスピードを理解しているのです。
さて、スカイダイビングは高度を落下しているので、風景の変化がほとんど御座いません。
パラシュートが開く高度1300mの時点では地面もまだかなり遠いので「地面が近づいている!」という感覚もないのです。
一方でバンジージャンプは非常に低い高さで飛んでいるので風景の変化は非常に大きいですし、地面が近づいてくるという感覚も非常に大きいでしょう。
つまり、スピードだけで比較すればスカイダイビングの方が速いのですが、スピード感で比較すればバンジージャンプの方が速いのです。
「フワッ」とする不快感の差は?
ジェットコースターが苦手な方の多くは、ジェットコースター が落ちるときに感じる「フワッ」とした不快感が苦手な方も多いでしょう。
それではあの「フワッ」とする不快な感じは一体どのような仕組みで発生するのでしょうか?
これは落下をすることで、内臓が体の中で動くことで発生致します。
さて、それではスカイダイビングとバンジージャンプではどちらの方が「フワッ」とした感覚になるでしょうか?
落下をする際の初速はどちらも同じですので、スピードや加速度の差は御座いません。
しかし、バンジージャンプとスカイダイビングでは「落下をする際の姿勢」に違いがあるのです。
バンジージャンプは基本的に直立姿勢で飛び降ります。
正確に言えば逆立ちの姿勢になるのですが、縦方向の体勢で落ちていくことに変わりはありません。
一方でスカイダイビングはうつ伏せ体勢で落下をしていきます。
さて、先ほど申し上げた通り、「フワッ」とした不快感は内臓が動くことで発生するのですが内臓が動く幅は体勢によって大きく異なります。
人間は基本的に縦長な生き物なので、縦方向でジャンプをした場合、内臓は大きく動くでしょう。
一方でうつ伏せで飛んだ場合、内臓が動く幅はあまり大きくありません。何故ならば動こうというエネルギーが発生してもすぐに肋骨にぶつかってしまい動くことが出来ないのです。
バンジージャンプとスカイダイビングで初速が変わらない以上、「フワッ」とする不快感は体勢で決まります。
そして体勢の差で考えると、より「フワッ」とした不快感を感じるのは間違いなくバンジージャンプでしょう。