お悩み相談

【お悩み相談第29回】お客様は神様では御座いません。

コンビニの怖い兄ちゃんにクレームを言う人間はほぼいない

強面のコンビニ店員にクレームを付けている人間を見たことがあるでしょうか?

少なくとも私は見たことがありません。

とは言え、強面のコンビニ店員だと正当なクレームまでお客様言えなくなってしまうので、それはそれで問題なのですが、大事なことはそこでは御座いません。

要するに「クレーマー」は相手を選んでクレームを言っているということ

彼らだって誰かれ構わずクレームを言っている訳ではないのです。きちんと自分にとって都合がいい、クレームを言っても問題なさそうな人間をきちんとしっかり選んで言っています。酔っ払ったサラリーマンですら、強面の兄ちゃんには変な絡みをしないのです。

それでは彼らは一体どんな基準で相手を選んでいるのか。

それは極めて簡単。

  1. ゴネても怒らなさそう。
  2. ゴネたら謝りそう。
  3. ゴネたら何かしらサービスしてくれそう。

ところで先ほど、こんなことをお伝えしたのをお覚えでしょうか?

「現場の従業員」の弱みに漬け込んで金銭を脅し取ろうとしている

この「弱み」こそ、クレーマー問題の究極の問題で御座います。

この「弱み」さえなければ、クレーマーと相対してしまっても戦うことが出来ますし、そもそもこの「弱み」がない人間の元に、正当ではないクレーマーは寄ってきません。

クレーマーを上手に扱うためにも、そもそもクレーマーと対面しないためにも「弱み」を無くすことが最も重要なことで御座います。

ここまでのまとめ

  1. 弱みを持った人間だからクレーマーが寄ってくる
  2. 弱みを持った人間だからクレーマーと戦えない
  3. クレーマーは相手を見てクレームしてる

弱み


会社を辞めることが出来ない。または「辞めることが出来ない」と思い込んでしまっている。


上司から「お前が穏便に済ませろ」という指示が出ている。なおかつ、上司に意見が出来ない状況である。

この2つの弱みを満たしてしまった方は、クレーマーから逃げることが出来ません。

なぜなら、この2つの弱みを持っている方は

  1. 揉めることが出来ないので、戦うこと(交渉すること)が出来ず
  2. 辞めることが出来ないので、逃げることが出来ず
  3. 意見ができないので、上司の指示を断ることが出来ないのです。

ですので、この2つの条件を満たしてしまっている方は、相手に対して1つしか対処法が御座いません。

ただただ謝り続け、それでもダメなら自腹を切る。

一時期問題になった「年賀ハガキのノルマ」や「コンビニのケーキ販売のノルマ」などもこの「自腹」によるものです。ただしこの場合は「クレーマー」ではなく「上司」との交渉が出来なくなってしまったために発生した事件で御座います。

そしてこんな弱みを持っていることは一瞬で相手に伝わります。

だからクレーマーが寄ってくる。また自分に自信がなくなる。クレーマーに狙われる。

負のスパイラルに陥って、抜け出せない状況になってしまうのです。

今の上司はクレームの時代を生きてきた

先ほどの2つの条件のうち、解決するのがより難しいのは「上司」の方でしょう。

皆様が「うちの上司はポンコツだ!なんでクレームの対応をしないんだ!」と言いたくなる気持ちは分かります。ですが、上司もまた、たいていの場合は部下なのです。上司よりさらに上の部下であり、その上司の上司から「クレームは現場でなんとかしろや」と言われていることがほとんど。彼らは彼らで厳しい状況にあるのです。

また、今日上司と呼ばれることの多い40代から50代の社員というのは、基本的に入社してから今日まで「クレームに耐え抜いてでも、安くたくさん売らなくてはいけない時代」を生き続けてきたと言えるでしょう。

これはバブル崩壊後の日本における「デフレ」という経済状況が原因で御座います。デフレというのは、簡単に言えば「物の値段がどんどん下がる時代」のこと。

分かりやすい例が「牛丼チェーン」やユニクロを筆頭にしたファストファッションなど。マクドナルドのハンバーガーが2002年には59円になったのもその典型例でした。

このように物の値段が下がる時代で、売り上げや利益を維持しようと思ったら「薄利多売」に走るのが基本になります。つまり、値段をできる限り下げて、大量に販売する、という方針で御座います。

この方法にはいくつものメリットとデメリットが御座いますが、そのデメリットの1つとして「お客様を選べなくなる」というものが御座います。

例えば1万枚洋服を売ろうと思ったら、日本人の1万に1人が買ってくれれば完売します。逆に言えば他の9999万人からはどう思われたって問題ありません。

しかし、洋服を5000万枚売ろうと思ったら、日本人の2人に1人に買って貰わなくてはなりません。「お前はマナーが悪いから2度とくるな!」なんて言っていたら決して達成できない数字になってしまうのです。

これこそが薄利多売の悪夢でしょう。

このデフレのピークは統計的には2005年になるのですが、個人的な感覚としては2002年ごろが1番過激であったように感じます。とは言え、今の「上司」の方々は基本的に「薄利多売」世代の申し子とでもいうべき世代であるのは間違い無いでしょう。

 

そんな世代の方に「これから薄利多売ではなく、クレーマーとはきちんと戦わなくてはいけません! あれは客じゃないんです!」なんて言ってもそうそう伝わりません。彼らは20代30代の社会人として最も重要な時期に「値下げして、1人でも多くのお客様に売る!」という時代を生き抜いたのです。もちろん時代の変化に対応している方もいらっしゃいますが、難しいのは間違いありません。

また、上司の方々の世代は、今の我々よりさらに輪をかけて「転職」が困難な時代でした。もちろん今も転職は難しいですし、仮に転職できたとしても、そこはブラックというような時代では御座いますが、上司の方々の時代は「ブラックすらない」という時代だったのです。つまり「絶対に会社を辞められない」という意識は我々より高いことでしょう。

ある意味であの時代がクレーマーを作り出してしまったのです。目の前の社員は、どれだけゴネようとも絶対にこちらを客扱いする。さらにどれだけストレスをかけても絶対に会社にしがみつく。そんな絶望的な状況にあったのが今の40代から50代の世代です。

そんな「弱み」がプンプン臭ってくる社員があまりにも増えたのが、今日こうしてクレーマーが非常に増えてしまった原因ではないかと私は考えています。あとインターネットの普及で、クレーマーの意見を聞く人が生まれてしまった、というのも理由の1つですが、今回はそこは置いておきましょう。

ともかく、そんな辛い時代を生き抜いてきた方々に少しだけ同情して下されば幸いです。

辞める覚悟

と、上司に同情するのは、それはそれで良いとして、それより重要な話をしましょう。

上司はこれだけ深い事情を抱えて、今の上司になったのです。今更、我々若人がなにを言ってもそうそう変わったりは致しません。

つまり、上司の方針を変えることはほぼ不可能ということで御座います。それならば我々に残された道は1つだけ。

辞める覚悟で御座います。

「会社を辞めることができる」というのはサラリーマンとして働く上で、最も重要な切り札で御座います。

切り札というのは「持っている」ということに意味があるのであり、不必要に切る必要は御座いません。このことをどうかしっかりとご理解くださいませ。

切り札を手に入れた瞬間、切ってしまう方がよくいますが、切り札は切った瞬間ただの紙切れになってしまうのです。

そのことはどうかお忘れなきよう願います。

切り札は使ったら無くなるもの。切り札が無くなれば、また次の職場で切り札のない悪夢に悩まされることになるでしょう。

大事なのはあくまでも「切り札」を持った状態で働くということ。最悪の場合切る必要も御座いますが、わざわざ無駄に切るのは悪手でしかないのです。

その気になれば辞められる。

もし明日、仕事であまりにも理不尽なことがあって、勢いで退職届を叩きつけてしまったとしても。

今より多少生活水準が下がるかもしれないけど、まぁそれなりに生きていける。

 

私が皆様にさせて頂きたいアドバイスを一言でまとめるとこのようになります。

つまり、その気になればいつでも辞めることが出来る、という状態

 

「この会社を辞めることが出来ない」と思っていると、それは弱みになってしまいます。どれだけ厳しい状況に追い込んでも辞めないのですから、追い込み放題。クレーマーからも上司からも、その弱みは狙われ続けます。

ですので「その気になれば辞められる」という精神状態を維持することが何よりも重要であると言えるでしょう。何も本当に辞める必要などないのです。「その気になれば辞めることが出来る」という精神状態であれば、仕事に余裕が生まれ、クレーマーも上司も無茶を言えなくなる。

とは言え、なんの計画もなく辞めてしまえば、生活が物凄く厳しくなるのは事実。そのため「会社を辞めたとしても、ある程度のお金が入るプラン」を考えておかないと「その気になれば辞めることが出来る」と思うことは出来ません。

もちろん「完璧なプラン」であればあるほど、心の余裕は大きくなります。ですが完璧なプランを作るとしたら「貯金を1億円貯める」とか「明確な転職先を用意する」とか「2人を養うのに十分なだけの稼ぎがある人と結婚する」などのそれが出来れば苦労しない、というものになりがち。

ですが、プランは完璧でなくても良いのです。

「会社辞めてもなんとかなるだろう」と考えることさえ出来れば十分。

そしてそのためには、転職を出来る限りいつも身近な場所に置いておくことが重要でしょう。

転職を身近にする

真剣に転職活動をするのも、それはそれで1つの手段であることは間違いありません。

もちろん、いい転職先があればそのまま転職してしまっても構わないのですが、別に転職しなくたっていいのです。

「自分でも転職できそうだな」

そう、思うことが非常に重要なので御座います。

「なんだ、自分でも転職できるじゃん。今の会社に固執する理由なんて何にもないじゃん!」

そう、思うことが重要なのです。本当に転職するかどうか、ではなく、その心の余裕こそが重要であると言えるでしょう。

もちろん、そもそもの目的は「この会社がなくても何とかなる」という心の余裕を作ることですので、転職以外の方法でも構わないのですが、現実的な話として転職を考えることが最も簡単で御座います。

ちなみにほかの方法としましては、

  1. 結婚して共働きになる
  2. フリーランスとして独立出来るスキルを身につける
  3. 他社から声がかかるほど成果を出す
  4. 宝くじでも当てる

などの方法が御座います。

正直、こんなことが出来るなら、誰も苦労しない方法で御座いますので、今回はその中では比較的現実的な「転職を常に視野に入れておく」をご提案させて頂きました。



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ちなみに私の市場価値は630万円でした。高値を付けて下さり有難う御座います

 

時代の変化

そもそも、今回のご質問者様はご質問文において「困った客」という表現をされておりますが、その方々の大半は「客」では御座いません。

ご質問者様を含め、多くの方は心の中で「お前は買わなくて良いから二度と来るな!」と思っていらっしゃることでしょう。そしておそらく今後の世界は少なからずその方向へとシフトしていくのではないかと私は感じております。

バブル崩壊後。物が極端に売れなくなった時代。あの時代に社会は「お金を払う人」をあまりにも優遇してしまいました。

その時代が「クレーマー」を育て、インターネットの発達がそれに拍車をかけたと言えるでしょう。

しかし、恐らくその時代はそう長くありません。バブル崩壊後の失われた20年を生きぬいた世代は、時期に定年になりますし、世論がそういったクレーマーの横暴に疑問を感じ始めているように思います。

とは言え、少なくとも今日の段階ではまだ「クレーマーもお客様」と思っている方々が、経済の中心には少なくありません。そして「会社を辞めることが出来ない」というのは「そういう上司たちに媚を売らなくては生きていけない」のです。

ですので、そういった人たちに屈せずに生きていくためにも「会社を辞めることが出来る」という心の余裕は大事なのです。何も転職でなくたってかまいません。彼らに嫌われても大丈夫だ、という心の余裕があれば良いのです。

狂気の被害者にならないために

今回は本当に物凄く長いコラムを最後までお読み頂き誠に有難う御座いました。

最後に1つだけ未来の話をさせて頂きます。

そもそも「デフレ」のせいで「クレーマー」が増加したとお話させて頂きましたが、それではデフレの反対の「インフレ」のときはどうなるかと言えば、これは非常に単純です。

買い手が調子に乗るのがデフレ。

ということはインフレでは「売り手」が調子に乗る、ということ。

私はさきほど「時代が変わりつつある」というお話をさせて頂きました。経済評論家ではないので、たいそうなことは言えませんが、もし時代が変わり「クレーマー」が許されない文化になったらどうなるでしょうか?

悪質なクレーマーが許されないのは良いことです。ですが、時代がそのように変化したとき「元被害者」であった「売り手側」が今度は「狂気の被害者」となることでしょう。

お客様がちょっと文句を言ったら、すぐに出禁。

サービスなんて知ったことではない。

これまで被害を被った補填を、加害者にさせなくてはならない。

 

そんな時代にならないためにも、どうかお忘れなきよう願います。

目には目を、歯には歯を。

だが、許してやるのが一番いい。


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