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【お悩み相談第43回】人を不幸にしたいという感情

【ご質問】

半年ほど前から、ある風俗嬢を真剣に好きになりました。

LINEを交換しており、予約や、世間話などをしていましたが、一週間ほど未読スルーになりました。

もう会えないのかと悶々とした私は魔が差し、Instagramを検索しました。

彼女がInstagramをしていたこと、そして今までの会話のキーワードで検索すると、すぐに見つかりました。

そこには、連絡がない期間も、彼氏と過ごしていたこと、そして妊娠初期であることが書かれてました。

そして、この恋は諦めました。(というか諦めざるを得なかった。)

子どもが産まれるのだから、幸せになってほしい、そう思っていました。

しかし、時間が経つにつれ、頭によぎるのは、Instagramに「この人は風俗嬢だった」など書き込むこと。

人気風俗嬢だったため、ネット掲示板のお店のスレにアカウントを晒すこと。彼氏にいろんな手を使って風俗嬢だったことをバラすこと。そんなことばかり考えています。

私はこの感情により、ストーカー、犯罪者の思考になっていると感じ、自分に失望しています。

一方で、私はとにかく彼女とその彼氏を少しでもいいから不幸にしたいと考えているです。私が望んでいたものを全て得た彼氏への嫉妬、そこから来る「壊したい」という衝動があるのです。

自分の気持ちをあらためて、前に進みたいと思っています。

この悪意を消す方法はありますでしょうか。

よろしくお願いします。

【回答】

ご質問誠に有難う御座います。

ラブホテル産業の話を少しさせて頂きましょう。

ラブホテルには部屋の鍵や料金を管理するシステムが導入されておりますが、実はこのシステムはとある企業が非常に大きなシェアを握っております。

その企業は皆様もきっと名前をご存知のことでしょう。

株式会社USEN
(正確にはその子会社の株式会社アルメックスですが、分かりやすくするためにUSENで統一させて頂きます)

飲食店や商業施設で流れるBGMで有名なUSEN(ユーセン)は、実はラブホテルシステムの最王手でもあるのです。

もちろんUSEN以外にも様々な企業がラブホテルのシステムを販売しておりますが、今のところ業界最王手はUSEN。

ところで私のホテルもUSENのシステムを導入しておりますが、正直これまで何度か他の企業のシステムを導入しようかと検討したことが御座います。

別に料金的にUSENが圧倒的に優れているというわけでもありませんし、システムの性能的には”あくまでも個人的な意見”としては別の会社の方が優れているというところも少なくありません。そして何よりも私のホテルで使用しているUSENのシステムが旧式なこともあり、3日に1回くらいエラーが発生します。

しかし、少なくとも今のところ今のシステムを変えるつもりは御座いません。それは何もシステム変更にかかるコストが理由ではなく、いま使っているシステムが「ある点において」他のシステムを圧倒的に凌駕しているからで御座います。

壊れないより、直しやすいが重要

それは修理

確かに私のホテルの旧式システムはかなり頻繁にトラブルを起こしますが、そのお陰でそのシステムで発生したトラブルの対処法のノウハウが我々にはかなり蓄積されております。ですのでどんなトラブルでも迅速に対処できますし、修理も出来る。

そしてこちらの方が重要なのですが「USEN」のサポート力が常軌を逸脱しているのです。

信じられないかも知れませんが、私のこれまでの経験的には24時間365日。いついかなるときに電話をしても15分以内に対応。1時間以内に修理の部品を持ってホテルに到着しているのです。そして旧式であるため修理して下さるメンテナンスさんにもノウハウがあるため非常に迅速に修理が完了します。

これこそがUSENのシステムを利用している理由。

「壊れにくいシステム」や「ハイスペックなシステム」という謳い文句でたくさんのシステムが参入してきますが、現場の感覚で言えば「壊れないシステム」など少しも信用が出来ません。24時間365日休むことなくシステムは動き続けているのです。壊れないほうがおかしいでしょう。

それに仮にメーカーが完璧な商品を作り出したとして、我々現場の人間は精密機械であるシステム機器にコーラをこぼし、メーカーの人から「丁寧に扱って下さい」と言われている機材を乱雑に扱う。ときに何かの衝撃でブレーカーが落ち、漏水し、地震が起こる。

さすがにこれまで一度もお目にかかったことは御座いませんが、もし「絶対に壊れない」と売り込んでくる営業さんがいたら、私はその人間を決して信用しません。

物は必ず壊れる。

プログラムは必ずエラーを起こす。

人間は必ず失敗する。

システムは必ず矛盾を抱え破綻する。

それが大前提。

10年に1度しか壊れないシステムよりも、3日に1回壊れるものの簡単に修理できるシステムの方が丈夫である。

それが私の理念で御座います。

さて、それでは今回のご質問に話を戻しましょう。

もしかしたら今回のご質問文を読んで「なんて最低な男だ。そんなことを考えるなんてありえない!」というような感想を抱いた方がいらっしゃるかもしれません。

確かにご質問者様はご自身でも仰っているように「犯罪者」「ストーカー」の思考にかなり近い考えを持っていることでしょう。「そこから来る「壊したい」という衝動があるのです」なんていう一言は大量殺人を起こした犯人の動機としても違和感がありません。

ですが

ですがもし「ご質問者様」「ご質問者様に対して「そんなことを考えるなんてありえない」という感情を抱いた方」のどちらが怖いかと聞かれれば、私は後者の方が怖いと感じます。

薄氷の上を歩く

人を殺したいと思ったことはありますか?

「あいつが憎い、殺してやりたい」

「あいつがいなければ自分はもっと幸せになれるのに」

理由は何でも良いのですが、いかがでしょうか?

もちろん自殺だって人殺し。自分を殺したいと思ったことはありますか?

人を殺したいと思ったことはありますか?

少なくとも私は御座います。それも1度や2度ではないでしょう。

人を殺したいと思うなんて許されない」という主張は確かに最もだとは思うのですが、私たちは人間です。人を憎むこともあれば、恨むことも、妬むことも当然ある。これはもう仕方のないことなのです。

人を殺したいというほどのことではなくとも、目の前の人間を不幸に叩き落としたいと思うこともあれば、卑怯な手段を使いたいと思うこともある。法律違反をしたいと思うこともあれば、自分を傷つけたいと思うこともある。

私も、ご質問者様も、そしてこの文章をお読みの方も。

誰しも巨悪という湖に薄い氷を張って生きているだけの人間でしかありません。常に慎重でなければ薄氷は一瞬で割れてしまう。自分が薄氷の上を歩いていると忘れたとき、私達の足元の氷はいともたやすく割れてしまうのです。

いつだって氷が割れないか確認をし、氷が軋むわずかな音も聴き逃してはいけない。もしも割れそうになったらルートを換えて対策をする。

少なくともそう考えて生きていないと本当に悪になってしまうでしょう。

今回、ご質問者様は「この悪意を消す方法はありますでしょうか。」とご質問をされましたが、悪意は常に存在しているのです。私達が自覚をしていないだけで、常に私たち人間は巨悪を心に抱えながら生きている。

ご質問者様は「ストーカー、犯罪者の思考になっていると感じ、自分に失望しています。」と仰っていますが、私の価値観で言えば失望する必要はありません。

むしろ「失望」してはいけない。

それは「この機械は壊れません」と言っている営業マンです。壊れないと思っているから失望をするのです。自分にそんな悪意がないと思っているから失望するのです。

「悪意」は決して消えません。もちろん、その女性に対しての憎しみというようなピンポイントな悪意が消えることは御座いますが、根本的な悪は決して消えない。もし悪意が消えたように見えたなら、それは悪意が消えたのではなく視力が消えたのです。

視力が消えた人間こそが私は怖い。ご質問者様は今の時点では視力が健全に作動しているので、実は私はそこまで心配しておりませんし、そこまで怖くもありません。

むしろ、たしかに褒められたことではないとは言え、まだ何もしておらず必死に耐えようとしているご質問者様に対して暴言を投げかける人間の方がずっと怖い。特に「不純なことを考えるなんて許されない!」と視力を失った人間が私はとても怖いのです。

どうか視力を失わないで下さい。人間から「悪意」は決して消えない。私たちは死ぬまでそんな悪意と上手いことやっていかなくてはいけないのです。

確かに「壊れない機械」が作れるのならば、それに越したことはないのかもしれませんが、現実的にそれは不可能。

それならば、「常に壊れる」ことを前提にシステムを運用し、常に修理の手段を用意しておく。

壊れないものを作るより、壊れても修理できるものを作りましょう。壊れないと思っているから大きな失敗をするのです。

悪意と上手くやる

ご質問者様は今非常にお辛いことと思います。その女性に彼氏がいたこと、そして妊娠していることがすでに十分に辛いことでしょう。その上、自分の中の悪意と戦っているのです。辛くないはずがありません。

しかし、おそらくは今回のご質問者様に対して「風俗嬢に惚れるなんて馬鹿じゃないの!?」「好きな女性の幸せを祈れないなんて最低」とお考えになる女性は多いかと思います。

確かに今回のご質問者様がしていること、考えていることは、褒められたことではありません。ですが私の感覚で言えば、褒められたことでこそないとは言え、そこまで怒るような話でもないと考えています。ご質問者様がそれを行動に移さなければ、それはむしろ「耐えた」という成長ですらあるでしょう。

女性から理解されないことを承知で言えば、男という生物にとって貢いだ女性が他の男と付き合うというのは最大の苦痛の1つなのです。

女性はこれを性別を逆転させて「貢いだ男が他の女と付き合っているという状況」と比較して考えるので「何で幸せが祈れないの!?」と感じるかも知れませんが、自分がそう感じるからといって相手もそう感じるはずだ、というの狂気の考え方に他なりません。

男と女で物事に関しての感じ方は違う。それどころか個人個人で感じ方は全く違う。

好きな人が他の人と付き合えば、もちろんたいていの人は落ち込みますが、その悲しみの度合は全く違うのです。これは個人的な意見になりますが、男性は「付き合えそうな女性が、違う男性のとこに行く」ということを最大の苦痛とし、女性は「付き合っている男性が、違う女性のところに行く」ということを最大の苦痛に感じるように思います。

さて、話が脱線しましたが、私が今回のご質問者様にお伝えしたいのは、自分の悪意を特殊なものだと思わずに、上手く付き合うことを考えるべきということ。

ご質問者様は今、自分の中にある膨大な悪意に対して「自分の中にこんな悪意があったなんて信じられない。きっと嘘だ。自分の中にこんな悪意なんてあるはずがない!」と考え、悪意を消し去ろうとしていることでしょう。

それは危険です。大前提として私達人間の中には膨大な悪意が存在する。それは良いか悪いかの問題ではなく事実だから仕方がないのです。

重要なのは、自分の中に悪意があるということを忘れないこと。

自分の中には「悪意」という「故障の原因」があることを理解して、常に自分が悪意に染まる可能性があることを忘れないこと。

「自分の中には悪意なんて無い。そんなことを考える人間は許されない。自分はそんな悪いことを考えない立派な人間だ。」とか言っている人間がいつだって世界破滅に導く。

根本的に人間は、悪意に満ち、楽に流され、欲に溺れる不完全な存在である。

自分にそういう悪意はない、と言っている人間は、私からすると「この機械は絶対に壊れません」と言っている営業マンにしか見えないのです。そんな機械を私は決して買わない。

ものが壊れるのは当然のこと。それをどう修理できるかということが重要なのです。

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お知らせ

私が原作を書いている「ラブホの上野さん」が9月20日からFODで放送されます。

皆様にお楽しみ頂ける内容になっているので、ぜひぜひ御覧ください。

FOD

なおドラマのシーズン1はすでにFODで配信されております。

FODでは今「初月無料キャンペーン」を行っているので、キャンペーン利用で登録→1ヶ月以内に解約をした場合、料金はかからないのでこの機会に「ラブホの上野さんシーズン1」を無料でご視聴頂ければ幸いです。

宣伝ばかりになってしまって申し訳ございませんが、皆様にお楽しみいただけるようスタッフさんと力を合わせて頑張って作ったので、是非ご視聴頂ければ幸いです。

何卒よろしくお願いいたします。

上野