パスを回せ！
上野
会話は1人でするものでは御座いません。みんなでぐるぐる回して行うものです。
上野
だから自分のところボールが来たら、きちんと次の人にパスを出すのが重要なのです。
一条
パス？
上野
ええ、さっきの「押すなよ」の例で考えて見ましょう。
上島「押すなよ！？絶対押すなよ！？」
上野
まず上島さんが「押すなよ」というパスを出しています。
相方「OK！押さないよ！（と言いながら押す）」
上野
そのパスを受けて「押す」というパスを返す。このようにパスのやりとりをすることこそが会話であると言えるでしょう。
一条
なるほど……
上野
もちろん押さない場合でもこの構造は変わりません
上島「押すなよ！？絶対押すなよ！？」
相方「OK！押さないよ！（本当に押さない）」
上野
このように上島さんのパスに対してきちんとパスを返しています。
一条
ほうほう……
上野
では、何故パスを回すのが重要なのかということを考えて見ましょう
上野
この上島さんからのパスを受け取った人が押すでもなく押さないでもなく、中途半端な対応をしたらどうなりますか？
一条
上島さんは何をすればいいか分からない！
上野
正解！
上野
もしも押されると分かれば、上島さんは
上野
と落ちることが出来ますし、逆に「押さない」と分かれば
上野
と言うことが出来ます
上野
しかしパスを受けた方がどっち付かずの対応をしていると……
上野
というように会話が止まってしまうのです。
一条
なるほど！
上野
つまり押すなよタイムで重要なのは「押す」か「押さない」かではなく、どれだけ早く自分の決断を相手に伝えるパスを出すか、ということ。
上野
どっちでも良いので「私はこっちを選択しました」ということを素早く正確に相手に伝えることが重要なのです。
上野
そしてこれは「面白い話して」でも同じことが言えます。
上野
最初から無茶振りなのですから、話がスベること自体は問題ありません。
上野
スベることが悪いのではなく「スベっているのかどうかわからない」という状態を維持してしまうことが問題なのです。
上野
逆に言えば「スベった」ということが素早くちゃんと伝わりさえすれば、別に話はスベっても良いんですよ。それで会話の流れを止めることはないのですから。
一条
どういうこと？
上野
まぁこれも実例で考えて見ましょう
「なんか面白い話してよ」で「ちゃんとスベる」
肥後「上島、なんか面白い話してよ」
上島「分かりました」
上島「この前ね、ちょっとパンダの尻尾の色で寺門と揉めたんですよ」
上島「俺はね黒って言ったんですけど、寺門が白って言うんですよ。」
上島「バカ言っちゃいけねえ。体が白いのに尻尾まで白かったら、どこから尻尾か分かんねじゃねえかって、そんな具合に決着が付かなかったから上野の動物園まで見に行ったんですよ」
上島「パンダの子供が生まれただとかなんとかで5時間も並ばされましたよ、今時5時間並ぶってプーさんのハニーハントだってそんなに並びませんよ。パンダもプーも熊だけど、なんで熊見るのにこんなに並ばなくちゃいけないんですかね？」
上島「っと、そんなんで寺門と一緒にパンダを見たらびっくりしたんですよ。尻尾もちゃんと白かった。パンダは尻尾も白い、パンダは尾も白い……、寺門が何か上手いこと言った風に言いやがったんですよ」
上島「尾も白い話だね、ってね。」
肥後「……」
上島「あれ？ 滑りました？」
肥後「微妙にちゃんと成立してんのがリアクションに困るわ！」
「滑った話をしました」ということをちゃんと伝えることで「滑った話である」ということが共有できたので肥後はツッコミが出来る
上野
このように「滑った」ということをちゃんと伝えれば、相手はそのパスに反応することが出来るので会話の流れが止まりません。
上野
しかし、この「滑りました？」がないと周りの人はその話がスベっているのか、それとも面白い話なのかが分からない
上野
結果としてツッコミが遅れる。そのせいで空気が悪くなるのです。
上野
だから自分でちゃんと「スベった」と言うことが重要なのです。
一条
あのー「話がスベっているかどうか分からない」ってどういう意味ですか？
上野
そもそもその話が面白いかどうかというのは極めて主観的な話でしかありません。
一条
好みの問題ですもんね
上野
だからみんな人の顔色を見ながら「面白い」「つまらない」の判断を下しているのです。
上野
良くも悪くも自分の感性で「面白さ」を判断できる方なんてほぼほぼいませんよ
上野
そしてこれが重要なのですが……
上野
相手は「なんか面白い話しろよ」という言葉を口にしてしまうほど、笑いのセンスも無ければトーク力もない人間なんですよ？
上野
こっちがちゃんと「スベりましたよ」と教えてあげないと、ツッコミなんて出来るはずないじゃないですか。
一条
なるほど……
1人で面白い必要はない
上野
そもそも「面白い話してよ」と言われて困ってしまう方って、自分の話だけで面白くしようとしている節があるように感じます。
一条
どういうこと？
上野
ちょっと私に「面白い話してよ」って言ってください
一条
先輩、ちょっと面白い話してください！
上野
AでBでCなんですよ。そしてなんと！ Dです！
上野
とまぁ、こんな感じで自分の話で相手を笑わせようとしているんですよね。
一条
なんか間違っているんですか？
上野
1人でする面白い話は会話ではなく「ネタ」です。
上野
ネタはネタであり、それは面白い話ではありません
一条
じゃあ面白い話って何なんですか？
上野
会話です。
上野
パスがみんなで続けば良いんですよ。
上野
だから「面白い話をしろよ」って言われたら、新しいテーマを出して、疑問形で投げれば良いんですよ
一条
先輩、ちょっと面白い話してください！
上野
最近さ、久しぶりにカラオケ行ったんだけど、上位曲アニソンばっかじゃね？
一条
そういやなんか３年くらい前は千本桜が1位で驚いた記憶が……
上野
え、千本桜って3年前？
一条
……調べたら7年前だわ
上野
……うそやん
一条
え、7年前って何歳？
上野
俺二十歳
一条
ええ……怖
上野
この会話って一箇所もオチがないですよね？
一条
はい、ないです。
上野
笑いどこも０ですよね？
一条
０ですね……
上野
これで良いんですよ
一条
どういうことですか？
上野
この会話はテンポが良いんです。
上野
つまりそれは「きちんとパスが循環している」ということ
上野
会話ってそれが楽しんですよ
一条
どういうこと？
上野
確かにシュートをバーンって決める話も面白いですけど
上野
別にみんなでボールを回しているだけでも楽しいじゃないですか。むしろシュートだけって楽しくないですよ
一条
だからちゃんとパスを出せばそれで良い、と？
上野
そういうことです。
上野
面白い話ってつまらない話の集合体なんです
上野
1つ1つはつまらない話ですが、それが集合すると楽しい話であり、楽しい時間になる。単体で面白いなんてことはそうそう無いんですよ。
上野
一条くん、ちょっと上手いこと言って良いですか？
一条
良いですけど……そんなにハードルあげて大丈夫ですか？
上野
大丈夫です、超うまいこと言いますから！
一条
……どうぞ
上野
ただ言葉に詰まってしまいパスが出せない。これだけが最悪の状況です。だから逆に言えば「詰まる」ということさえ無ければ良い！
上野
つまり！
上野
詰まらない話なら良いんです！
一条
……
上野
と、このようにスベったら適切に素早く「スベったね」と言いましょう。詰まらずに言えば完璧です！
一条
保険付きでボケたんですね……
絶対マウント型
上野
ところで一条くん、ここまで読んでこんなことは思いませんでした？
上野
面白い話をしないと許してくれない人いるんだよなぁ、って
一条
思いました……
上野
「面白い話して」とか言う方のほとんどはなんとなく適当に言っているだけなので、テンポよく返事をすればなんとかなります
一条
はい……
上野
しかし、たまに頑なに「良いから面白い話しろよ」「てかそう言うの良いから」的なことを言う方がいますよね
一条
そうです！ そういうタイプはどうすれば良いんですか？
上野
縁を切れ
一条
えええ！？
一条
ちょ、ちょっと極端すぎやしませんか……？
上野
良いですか？ 楽しい時間を一緒に過ごそうとする努力をしない人は切るしかありません。
上野
と言うかどうしてそんなアホと一緒にいなくちゃいけないんですか……仕事ならまだしも、こっちを貶めようとしてくる相手とニヤニヤ笑顔で過ごす方はそれはそれで狂気です
一条
でも会社の先輩とか……縁が切れない相手の場合は？
上野
それはそれで簡単ですよ！
一条
おお！
上野
全力でスベれ！
一条
はい……？
上野
そもそも一条君、面白いこと言うまで許さない方々はなんでそんなことをしているのですか？
一条
面白い話を聞きたいから？
上野
そんなわけないでしょう。
上野
君が苦しむ姿を見て楽しんでいるんですよ
一条
はい？
上野
つまり彼らにとっての「楽しい」とは、苦しんでいる人間を「お前つまんねえな」とバカにすることなのです。
上野
それならば彼らの期待に応えるように「苦しんだふり」をしてあげれば良いんですよ。
一条
面白い話をする……っていう方法は？
上野
君が苦しむのを楽しみにしている人間なんですよ？ 君が面白い話をしたって……
上野
おもんな……もう一回やれよ
上野
って言われるだけですよ
一条
なんかもっと穏便な方法は……
上野
彼らの要求を満たす、つまり苦しんだふりをしてあげるのが一番穏便です。
一条
それはちょっと嫌だなぁ、って
上野
ならば逃亡か全面戦争の２択です。
上野
会社であれば、逃亡は転職ですね
一条
全面戦争は？
上野
パワハラかなんかでそれを言ってきた人を会社から追放する。
上野
追放しないにしても、同僚を味方につけてその人を隅に追いやるっていう方法もありますね！
一条
相手の要求を飲むより穏便な方法は？
上野
ないです
上野
適当に「なんか面白い話ない？」って言ってくる方は大した問題ではありません。適当に言っているだけなのでテンポさえ破らなければ、普通に回避できます
上野
しかし最初から相手を貶める目的で言ってくる人間はどうしようもありません。
上野
宣戦布告されてるんですよ！
上野
こっちが嫌だろうが、相手が攻めてきたら戦争です。
上野
戦うか、逃げるか、降伏するか。その3つだけしかない。
一条
な、なんとか回避する方法は……？
上野
……ないです
上野
戦わず、逃げず、降伏もしなければ
上野
戦争が、虐殺になるだけですよ。
一条
相手の良心に訴えかけるのは！？
上野
それでなんとかなる相手は、最初から宣戦布告なんかして来ないですよ。
一条
条件を出して交渉するのは？
上野
交渉でメリットを奪い、そのあとにもう一回宣戦布告をされるだけです。より確実に殺されるだけです。
今回のオチ
上野
一条君、最後に１つ飛び道具を用意しました。
一条
飛び道具？
上野
同じ相手に２回使うことはできませんが、とりあえず１回ならなんとかなる方法です。
一条
え、普通に良いじゃないですか
上野
じゃあちょっと「なんか面白い話してよ」って言ってください
一条
なんか面白い話しろよ！
上野
え？
一条
？？？
上野
びっくりしました
一条
何が？
上野
ちょうどこの前、「なんか面白い話しろよ」って言う人についてのコラム読んだんですよ
上野
ほら、これ
上野
そう言いながらこのページを見せます
上野
そして
上野
この記事面白くないっすか？
上野
と言います。
一条
それで「この記事面白いな」って言われたら？
上野
全部解決ですね！
一条
じゃあ「この記事つまらないな」って言われたら？
上野
そうっすよね！ 俺もそう思ってました！
上野
てかこいつ偉そうに語ってるんですけど、どれもアホなんすよ。アホすぎて逆に面白いんでちょっと見てくださいよ！
上野
で、オッケーです。
上野
さらにもしもその方がちゃんとこの記事を最後まで読んで下さったら。
上野
お前この記事のまんまじゃねえか！
上野
って笑って下さいます。
一条
……
上野
あ、でもこの記事をすぐに出せないとこの技は使えないなぁ……
上野
大変だ、どうしよう！困った困った！
上野
そっか！このページをブックマークしておけば良いんだ！
上野
もしくは自分用のメモとしてツイッターで呟いておいたり、私のLINEに登録したりして、いつでもこの記事を取り出せるようにすれば良いんだ！
一条
……先輩？
上野
スベってないから、スベったって言いませんよ？
