過渡期の波に飲まれぬように
東京都の最低賃金は現在958円になりました。キリが悪いので仮に1000円としましょう。
すると基本的には企業側からすれば1時間に少なくとも1000円の労働生産性を持たない人材を雇うことは出来ません。現実的には税金やら経費の問題があるので少なく見積もっても1500円程度の生産性がない人間を雇うことは出来ないでしょう。
この流れが悪いことだとは思いません。
しかし40代のスキルのおじさんが1500円以上の労働生産性を持つことは極めて困難です。看板持ちだって道路交通法という法律があるからこそ仕方なく存在している仕事のようなもので、どう考えたって彼らがいることによって1500円の労働生産性があるとは思えません。ちなみに山手線のホーム看板ですら時給換算をすれば980円です。
そのためこの変化の流れの中で1時間に1500円の付加価値を産むことがない仕事は淘汰され、それ以上の生産性を持つ仕事しか残らないのは間違いありません。
最終的には何かしらの方法でこの問題は解決するかもしれませんが、流石に一朝一夕で解決するということはないでしょう。するとその過渡期の間、生産性の低い人間は劣悪な仕事すらすることが出来ないのです。
最後に私の本業であるラブホテルの話をさせて頂きたく思います。
まだ私が入社するよりもずっと前の話。私より10歳以上年上の先輩たちが入社した時代のラブホテルのスタッフというのはとんでもない人が非常に多かったそうです。
悪く言えばダメ人間の吹き溜まり。
ラブホテルの自動精算機は「お客様へのプライバシー」ではなく「金を盗む従業員対策」だったという説すらあるのです。
そんなラブホテルは非常に言葉を悪く言えば「無能の駆け込み寺」という側面も持っていたことでしょう。
経歴も能力も関係なく誰でも雇う。落ちに落ちた人間の最後の受け皿。その1つがラブホテルだったのだと思います。
しかし良くも悪くもラブホテルのスタッフの質は格段に上がりました。もちろん高いとは言いませんが、少なくともスキルがないくせに頑固で愛想の悪いおじさんを雇う理由は無くなったのです。
スキルも経験もロクになく、愛想も悪く頑固で体力のないおじさんの仕事が減るのは仕方がない側面も大きいでしょう。
それが悪いことばかりだとは思いませんし、彼らの自己責任に寄るところが大きいのは事実です。
ですが彼らもまた20年前は「今時ワープロも打てないおじさんとか仕事ねえよ笑」と笑っていたことでしょう。
「スマホすら使えないおっさんに仕事なんかねえよ」と笑っているうちに、自分が笑われる側にならないよう私たちは注意をしなくてはならない。
100位の人間を切り捨てた時、99位の人間が最下位になる。
看板持ちの女の子を見て、私はそんなことを思わずにはいられませんでした。