お悩み相談

「人を殺してたい」と思ったときに読んで欲しい話

【ご質問】

半年ほど前から、ある風俗嬢を真剣に好きになりました。

LINEを交換しており、予約や、世間話などをしていましたが、一週間ほど未読スルーになりました。

もう会えないのかと悶々とした私は魔が差し、Instagramを検索しました。

彼女がInstagramをしていたこと、そして今までの会話のキーワードで検索すると、すぐに見つかりました。

そこには、連絡がない期間も、彼氏と過ごしていたこと、そして妊娠初期であることが書かれてました。

そして、この恋は諦めました。(というか諦めざるを得なかった。)

子どもが産まれるのだから、幸せになってほしい、そう思っていました。

しかし、時間が経つにつれ、頭によぎるのは、Instagramに「この人は風俗嬢だった」など書き込むこと。

人気風俗嬢だったため、ネット掲示板のお店のスレにアカウントを晒すこと。彼氏にいろんな手を使って風俗嬢だったことをバラすこと。そんなことばかり考えています。

私はこの感情により、ストーカー、犯罪者の思考になっていると感じ、自分に失望しています。

一方で、私はとにかく彼女とその彼氏を少しでもいいから不幸にしたいと考えているです。私が望んでいたものを全て得た彼氏への嫉妬、そこから来る「壊したい」という衝動があるのです。

自分の気持ちをあらためて、前に進みたいと思っています。

この悪意を消す方法はありますでしょうか。

よろしくお願いします。

【回答】

ご質問誠に有難う御座います。

ラブホテル産業の話を少しさせて頂きましょう。

ラブホテルには部屋の鍵や料金を管理するシステムが導入されておりますが、実はこのシステムはとある企業が非常に大きなシェアを握っております。

その企業は皆様もきっと名前をご存知のことでしょう。

株式会社USEN
(正確にはその子会社のアルメックス)

飲食店や商業施設で流れるBGMで有名なUSEN(ユーセン)は、実はラブホテルシステムの最王手でもあるのです。

もちろんUSEN以外にも様々な企業がラブホテルのシステムを販売しておりますが、今のところ業界最王手はUSEN。

ところで私のホテルもUSENのシステムを導入しておりますが、正直これまで何度か他の企業のシステムを導入しようかと検討したことが御座います。

別に料金的にUSENが圧倒的に優れているというわけでもありませんし、システムの性能的には”あくまでも個人的な意見”としては別の会社の方が優れているというところも少なくありません。

そして何よりも私のホテルで使用しているUSENのシステムが旧式なこともあり、3日に1回くらいエラーが発生します。

しかし、少なくとも今のところ今のシステムを変えるつもりは御座いません。

それは何もシステム変更にかかるコストが理由ではなく、いま使っているシステムが「ある点において」他のシステムを圧倒的に凌駕しているからで御座います。

壊れないより、直しやすいが重要

USEN最大の魅力、それは修理でございます

確かに私のホテルの旧式システムはかなり頻繁にトラブルを起こしますが、そのお陰でそのシステムで発生したトラブルの対処法のノウハウが我々にはかなり蓄積されております。

ですのでどんなトラブルでも迅速に対処できますし、修理も比較的容易に可能です。

そしてこちらの方が重要なのですが「USEN」のサポート力が常軌を逸脱しているのです。

信じられないかも知れませんが、私のこれまでの経験的にはUSENのサポートは24時間365日いついかなるときに電話をしても15分以内に対応してくれます。

1月1日の午前3時に電話をしたら、午前4時に修理の部品を持ってホテルに到着したこともございました。

そして旧式であるため修理して下さるメンテナンスさんにもノウハウがあるため非常に迅速に修理が完了します。

これこそがUSENのシステムを利用している理由。

「壊れにくいシステム」や「ハイスペックなシステム」という謳い文句でたくさんのシステムが参入してきますが、現場の感覚で言えば「壊れないシステム」など少しも信用が出来ません。

24時間365日休むことなくシステムは動き続けているのですから、壊れないほうがおかしいでしょう。

それに仮にメーカーが完璧な商品を作り出したとして、我々現場の人間は精密機械であるシステム機器にコーラをこぼし、メーカーの人から「丁寧に扱って下さい」と言われている機材を乱雑に扱うのです。

ときに何かの衝撃でブレーカーが落ち、漏水し、地震が起こる。

さすがにこれまで一度もお目にかかったことは御座いませんが、もし「絶対に壊れない」と売り込んでくる営業さんがいたら、私はその人間を決して信用しません。

物は必ず壊れる。

プログラムは必ずエラーを起こす。

人間は必ず失敗する。

システムは必ず矛盾を抱え破綻する。

それが大前提。

10年に1度しか壊れないシステムよりも、3日に1回壊れるものの簡単に修理できるシステムの方が丈夫である。

それが私の理念で御座います。

さて、それでは今回のご質問に話を戻しましょう。

もしかしたら今回のご質問文を読んで「なんて最低な男だ。そんなことを考えるなんてありえない!」というような感想を抱いた方がいらっしゃるかもしれません。

確かにご質問者様はご自身でも仰っているように「犯罪者」「ストーカー」の思考にかなり近い考えを持っていることでしょう。

「そこから来る「壊したい」という衝動があるのです」なんていう一言は大量殺人を起こした犯人の動機としても違和感がありません。

しかし

しかしもし「ご質問者様」「ご質問者様に対して「そんなことを考えるなんてありえない」という感情を抱いた方」のどちらが怖いかと聞かれれば、私は後者の方が怖いと感じます。

「自分は絶対に大丈夫だ」なんていう根拠のない自信を振りかざしている人間の方が、私ははるかに怖いのです。

薄氷の上を歩く

人を殺したいと思ったことはあるでしょうか?

「あいつが憎い、殺してやりたい」

「あいつがいなければ自分はもっと幸せになれるのに」

理由は何でも良いのですが、人を殺したいと思ったことはあるでしょうか?

もちろん自殺だって人殺し。

自分を殺したいと思ったことはあるでしょうか?

人を殺したいと思ったことはあるでしょうか?

少なくとも私は御座います。

それも1度や2度ではないでしょう。

「人を殺したいと思うなんて許されない」という主張は確かに最もだとは思うのですが、私たちは人間です。人を憎むこともあれば、恨むことも、妬むことも当然ある。これはもう仕方のないことなのです。

人を殺したいというほどのことではなくとも、目の前の人間を不幸に叩き落としたいと思うこともあれば、卑怯な手段を使いたいと思うこともでしょう。

法律違反をしたいと思うこともあれば、自分を傷つけたいと思うこともあるのです。

私も、ご質問者様も、そしてこの文章をお読みの方も。

誰しも巨悪という湖に薄い氷を張って生きているだけの人間でしかありません。

常に慎重でなければ薄氷は一瞬で割れてしまう。

自分が薄氷の上を歩いていると忘れたとき、私達の足元の氷はいともたやすく割れてしまうのです。

いつだって氷が割れないか確認をし、氷が軋むわずかな音も聴き逃してはいけない。

もしも割れそうになったらルートを換えて対策をする。

少なくともそう考えて生きていないと本当に悪になってしまうでしょう。

今回、ご質問者様は「この悪意を消す方法はありますでしょうか。」とご質問をされましたが、悪意は常に存在しているのです。私達が自覚をしていないだけで、常に私たち人間は巨悪を心に抱えながら生きている。

ご質問者様は「ストーカー、犯罪者の思考になっていると感じ、自分に失望しています。」と仰っていますが、私の価値観で言えば失望する必要はありません。

むしろ「失望」してはいけない。

それは「この機械は壊れません」と言っている営業マンです。

壊れないと思っているから失望をするのです。

自分にそんな悪意がないと思っているから失望するのです。

「悪意」は決して消えません。

もちろん、その女性に対しての憎しみというようなピンポイントな悪意が消えることは御座いますが、根本的な悪は決して消えない。もし悪意が消えたように見えたなら、それは悪意が消えたのではなく視力が消えたのです。

視力が消えた人間こそが私は怖い。ご質問者様は今の時点では視力が健全に作動しているので、実は私はそこまで心配しておりませんし、そこまで怖くもありません。

むしろ、たしかに褒められたことではないとは言え、まだ何もしておらず必死に耐えようとしているご質問者様に対して暴言を投げかける人間の方がずっと怖い。特に「不純なことを考えるなんて許されない!」と視力を失った人間が私はとても怖いのです。

どうか視力を失わないで下さい。人間から「悪意」は決して消えない。私たちは死ぬまでそんな悪意と上手いことやっていかなくてはいけないのです。

確かに「壊れない機械」が作れるのならば、それに越したことはないのかもしれませんが、現実的にそれは不可能。

それならば、「常に壊れる」ことを前提にシステムを運用し、常に修理の手段を用意しておく。

壊れないものを作るより、壊れても修理できるものを作りましょう。

壊れないと思っているから大きな失敗をするのです。

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