転職はいつするべきでしょうか?
悩みは転職についてです。
私は新卒で今の職場に入りまして、あと1ヶ月でちょうど1年になりますが転職を考えています。
理由は仕事のやりがいのなさと人間関係の狭さと収入の少なさです。
特に人間関係の狭さにイライラしています。
古株の意見が強く、また改善していこうという気持ちが古株に無いため発展が期待できません。
ただ、次何処に行きたいかとか、どんな仕事をしたいとか将来への展望がこれといってなく、とてもぼんやりした状態です。
現在の職種ですが、薬剤師の資格を持っています。
資格なしの仕事よりも転職しやすい状況にありますが、ここ数年で資格習得のハードルが下がったため、需要より供給が多くなりつつあり転職するなら早めにという空気もあります
それで転職を考え始めた側面もあります。家族や大学時代の恩師には3年は我慢して働きなさいと言われます。
上野さんは転職についてどうお考えでしょうか。ぜひご意見をお聞かせください。よろしくお願いいたします。
【回答】
ご質問誠に有難う御座います。
今回は私の父の言葉を借りて、ご質問にお答えさせて頂ければと思います。
私の父は40年ほど前にとある大企業に入社をし、一昨年その企業を定年で退職しました。
「終身雇用」が一般的だった時代とは言え、それでも父のように終身雇用を最後まで全うした方はそこまで多くありません。
実際、私の父の同期だった人間の中で実際に定年まで勤め上げたのはほんの一部であり、ほとんどの社員は関連企業に出向したり、自ら社を後にしたり、望まぬリストラを宣告されてしまったりしています。
おおまかな数字では御座いますが、父の同期で定年まで勤め上げた社員はせいぜい2割から3割と言ったところでしょう。
特に2000年ごろには大規模なリストラと早期退職があり多くの社員がその流れの中で会社から離れることになりました。
身内びいきな話では御座いますが、父が定年まで同じ会社で働けたのは必ずしも”時代”によるだけのものではなかったことでしょう。
さて、時は2000年。
リストラが吹き荒れる社内で父が生き残りをかけた戦いをしているときに、私は父とこんな話をしたことを覚えています。
あれから20年近くも経っているのに未だにこの言葉は忘れません。
私「もしリストラになったらどうするの?」
父「そうなった時の転職先や仕事は用意してある。多少給料は下がるかもしれないが食うには困らない。」
父「だが、俺が幸運なのは多くの他の社員はリストラになった時の準備をしていないことだ。10年も20年も社会で働いていて「もしクビになったらどうするか?」ということを考え対策することすら出来ない無能がクビにならないわけがないじゃないか。だから準備が出来ている俺はクビにならないだろう。」
私は、この冷酷な言葉を心に刻んで仕事をしております。
クビになったら生活がなり行かなくなる人間は無能なのでクビになり、クビにしてもすぐには生活に困らない人間は有能なのでクビにならない。
私は別に新卒1年目で転職をしろとも言いませんし、3年我慢しろとも言いません。
ですが、おそらくご質問者様も出来ることならば転職をせずに一生同じ会社で働くことを望んでいるのではないでしょうか。
この気持ちはおそらく多くの方に共通する願いで御座います。
ですので今回のご質問者様の本当のお悩みは「転職すべきかどうか」ということよりも「今の職場環境をどうしたらもっと良いものに出来るのか」というものに近いのだと思います。
もちろんこの世の中には「人間関係を改善する方法」「上司に好かれる方法」「給料を上げる方法」などが書かれているような本が無数に存在しますので、そういった本を読んでみるのも良いでしょう。
しかし、ご質問者様には是非とも「もしもクビになったどうするか?」ということを考えて頂きたく思います。
全ての悩みを解決できる魔法の保険
会社で働いていると、様々な問題やトラブルに出くわすことでしょう。
しかし、そのトラブルや悩みの多くは「この会社に定年までいなくてはならない」ということが原因ではないでしょうか?
特に人間関係の悩みはそのほとんどが「この会社にいなくてはいけない」という考えが原因で御座います。
もちろん私は「嫌なことがあったら会社を辞めろ!」などとは言いません。
しかし、どうしても我慢できないことが起きたとき「この人とあと40年一緒に働かなくてはならない」と思ったら、とんでもないストレスになることでしょう。
しかし「まぁあと2年くらいだし」と思えば、そんな悩みも耐えれるもの。
仮に会社をやめないにしても「やめようと思えば辞められる」という余裕があれば、人間関係はかなり楽になるのです。
交渉とお願いは違う
「辞めようと思えば辞められる」という余裕は給料交渉でも有効に働きます。
たとえば今の給料が20万だったとして、これを30万にしたいと思ったら皆様ならどのように交渉をされるでしょうか?
多くの方は「給料を30万にして下さい」というように「お願い」をすることでしょう。
しかし残念ながらこの方法では、社長がよほどの善人でもなければ給料は上がりません。
何故ならばこの伝え方は「お願い」なのです。
「お願い」で状況は変わりません。
何故ならば「お願い」は自分のメリットの話しかしておらず、相手のメリットの話をしていないのです。
社長の立場に立って考えてみると分かりやすいでしょう。
社員から「給料を30万円にあげてください」とお願いされた時に、その「お願い」を叶えることに一体どのようなメリットがあるのでしょうか?
給料を10万円あげるということは、社長からしてみれば年間120万の出費です。
明らかなデメリットこそあれ、社長にとっては何のメリットも存在いたしません。
ですので、このような「お願い」は基本的に通用しないのです。
それでは給料をあげて欲しいのであれば、一体どうすれば良いのでしょうか?
答えは簡単。
「お願い」ではなく「交渉」をすれば良いのです。
交渉とは何か
交渉とお願いは明確に異なります。
その違いを一言で言えば
お願い=〇〇して下さい!
交渉=〇〇して下さい、さもなくば私はこうします!
というものになるでしょう。
重要なのはこの「さもなくば」の部分。
「さもなくば」がない頼みは全て「お願い」なのです。
例えば会社のトップ営業マンから
「給料100万円にしてくれません?さもなくば辞めます」
と言われたら、社長はどうするしょうか?。
社長としては給料を上げたくないのですが、給料を上げないとトップ営業マンが辞めてしまう。
社長は「給料をあげるコスト」と「トップ営業マンがいなくなる損失」を天秤にかけ、給料を上げた方が得であれば給料を上げざるを得ないのです。
会社の切り札
しかし、会社との社員との交渉においては「切り札」を持っています。
その切り札とはズバリ「リストラ」
たとえば先ほどの交渉の場面を考えてみましょう。
「給料100万円にしてくれません? しないなら辞めます」と交渉をしたとしても
「そっか、それは無理だ。嫌なら辞めてくれ」と言われてしまったらお終いなのです。
この切り札は「辞める準備が出来ていない社員」には、非常に強力な交渉材料になるでしょう。
なぜなら「辞める準備」が出来ていないことが会社にバレてしまっていたら、どれほど先ほどのような交渉をしたとしても「(なんか言ってるけど、どうせ辞めねえだろう・・・)」と思われてしまっているのです。
それでは今度は逆に会社から交渉を仕掛けられた場面を考えてみましょう。
会社「来月から給料は10万ね、嫌ならやめろ」
労働基準法を考えなければ、会社はこんな交渉を吹っかけることだって出来るのです。
何故ならば「クビ」という切り札への対策が出来ていない社員は、どれだけ劣悪な労働条件を突きつけられたとしても、それを飲むしか対応が出来ません。
つまり極端に言ってしまえば、会社は「自ら会社をやめることが出来ない社員の待遇」はどこまでも下げることが出来るのです。
給料は法律的な問題もあるので簡単に下げることは出来ませんが、労働時間や所属部署や仕事内容であれば、合法的に下げることは出来るでしょう。
どれほど境遇を悪くしたって、その社員は会社を辞めないのです。
論理的に考えて、境遇を悪くしない理由が御座いません。
会社が待遇を悪く出来ない社員とは?
トップ営業マンであろうとも、天才的な技術者であろうとも、自分から会社を辞める決断が下せない人間に対して会社はリストラという切り札でどこまでも強気に出ることが出来ます。
つまり逆に言えば「自分から辞めることの出来る社員」に対しては、会社は強気に出ることが出来ないのです。
こいつ、待遇を悪くしたら本気で辞めかねない……
このように会社側に思われていれば、会社はリストラという切り札を切ることが出来ず、待遇を悪くすることが出来ないのです。
実際に会社を辞めるかどうかは重要ではありません。
「待遇を悪くしたら辞めかねない(そして辞めて欲しくない)」と思われることが重要なのです。
切り札は使うことに意味があるのではありません。
切り札を「持っている」ということこそが重要なのです。
切り札は切ってしまったらただの札。
切らずにチラつかせ相手を脅すことこそが切り札の最大の武器なのです。
どうしてクビにならないの?
残念ながら、一部の超天才を除けば「その人しか出来ない仕事」というものはほとんど存在いたしません。
どれほど特殊な技能であったとしても、そのほとんどは「代わりの人材」は存在するのです。
よく「お前の代わりはいくらでもいる!」という言葉を耳にしますが、これは紛れもない事実でしょう。
この世に「代わりがいない人材」などほとんど存在いたしません。
しかし「代わりはいくらでもいる!」と言われたという話はよく聞きますが、本当に代わりが来てクビになったという話を聞いたことがあるでしょうか?
確かに「代わり」はいくらでも存在するのです。
ですが、たとえ代わりがいたとしても、その人材をすぐに簡単に用意できるかと言えば話は全く別問題。
端的に言って「代わり」を本当に用意するのは、あまりにもコストが膨大なのです。
例えば私はラブホテルで働いておりますが、私をクビにして、他の人材を採用しようと思ったら
1)面接にかかるコスト(1回5000円)
2)私をクビにするコスト(超膨大)
3)教育をするコスト(3ヶ月分の給料+教える人のコスト)
4)応募を集めるコスト(月30万くらい、見つからない可能性もある)
5)使い物にならない人物を雇ってしまう可能性のリスクとコスト(膨大)
6)すぐに代わりが見つからないリスクとコスト(膨大)
などのような膨大なコストが発生してしまうでしょう。
そんな面倒なコストを払うくらいなら、多少問題があったとしても今のまま私を使っていた方が効率的。
つまりよほどの無能社員でもなければ「お前の代わりはいくらでもいる!(が、そいつを雇うコストとお前をクビにするコストは結構高いので、できればお前は辞めないでくれ)」というのが企業の本音なのです。
特に人手不足が叫ばれる今日では、よほどの無能社員でもない限り、会社は皆様に辞めて欲しくないのです。
ですので、あとは「辞めかねない」という条件さえ満たせば、企業と戦うことができるでしょう。
辞めかねないと思わせるための転職
私は別に転職をしろと言うつもりも、転職するなと言うつもりも御座いません。
ですが、転職をする気がないにしても「辞める準備」をしておくことは、サラリーマンとして生きる上で極めて重要なことであると考えております。
一番簡単なのは、他の企業から「うちに来てくれ」と勧誘されることですが、誰もにこんな勧誘がくるわけでは御座いません。
副業である程度稼ぐこともまた「辞める準備」になるでしょう。
しかし、現実的な話をすればこれもまた誰もに出来る手段では御座いません。
ですので、一般的な方法としては転職サイトなどで自分が転職できる先を確保しておくことでしょう。
もちろん、転職先などそう簡単に確保することなど出来ません。
ですが「その気になれば転職できる!」と心に刻んでおくだけで、会社との交渉でも極めて強い立場で戦うことが出来るでしょう。
信用を勝ち取る最も簡単な手段
私は新しく清掃スタッフを雇ったとき、その人間の信用度を測るためにある行動をしています。
これは非常に簡単で「彼らが清掃に入る部屋に財布を置いておく」というもの。
彼らが「忘れ物があった」と申告すれば合格。
言わなければ不合格。
つまり「やろうと思えば財布を盗める状況で、財布を盗むかどうか」ということを試しているのです。
会社における信頼もこれに近いものがあるでしょう。
会社にとって転職で人材が流出してしまうのは、明らかな損害で御座います。
ですので特に優秀な社員であればあるほど、会社はその人材の確保に躍起になりますが、彼らが「転職しない」と信用される最大の理由は「転職できるのにしなかった」というものなのです。
他社からヘッドハンティングで狙われているのに、それを断った。
その気になればいくらでも転職先があるのに転職をしなかった。
そういった「出来るのにしなかった」という事実の積み重ねこそが信頼として積み上がっていくのです。
逆に言えば「生涯働きます」と口にしていたとしても「転職しなかったのではなく、出来なかっただけ」と会社から思われれば、決して信用されないと思っても間違い無いでしょう。
「出来るのにしなかった」からこそ信用されるのであり、「出来ないからしなかった人」は信用するに値しません。
サラリーマンは全員転職を考えた方がいい
サラリーマンとして働く以上、転職する気があってもなくても「自分が転職できるのかどうか」をきちんと考えておくべきでしょう。
これは会社との交渉でも役立ちますし、日頃の仕事でも挑戦が出来るようもなります。
特に人間関係を楽にするということにおいては、全てを解決する魔法の手段ですらあるでしょう。
重ね重ねになりますが、私は別に「転職しろ」と言いたいわけでは御座いません。
「転職できる準備」を日頃からした方がいいと言っているだけで御座います。
会社はリストラという切り札で従業員の待遇をどこまでも悪くすることが出来る存在です。
その切り札と戦うためにはこちらも「辞めることが出来る」という切り札を持たなくてはなりません。
この切り札は切らなくていいのです。
持っているだけで相手は恐れ、強く出れなくなる。
私は仕事用のカバンの底に日付の入っていない「退職願い」と「退職届」を忍ばせております。
この紙を今のところ使う気はありません。
ですが、必要とあればいつでも使う、ということを決して忘れないために、いつもカバンの底に忍ばせているのです。
少なくとも私にとっては、労働基準法なんていう厚い本より、この2枚の紙の方がずっと自分の労働環境を守っていてくれていると感じております。













転職をしないにしても「これだけたくさんの転職先がある」ということが分かるだけでもかなり有利になることでしょう。
自分のスキルで本来もらうべき「年収」が分かるので是非お試しくださいませ。
ちなみに私は780万円でした。
皆様の市場価値(年収)は780万より高いかどうかお試しいただければ幸いです。