【ご質問】
子供の頃のトラウマが消えなくて困っています。
どうしたらトラウマが消せるのでしょうか?
【回答】
ご質問誠に有難うございます。
早速では御座いますが、こちらの数字を暗記してみてくださいませ。
01234567890123456789
おそらくそこまで苦労せずに暗記ができたのではないでしょうか。
それでは次にこちらはいかがでしょうか。
01123581321345589144
おそらく先ほどより暗記するのにかなり苦労されたことと思います。
この2つの数字はどちらも20桁で御座いますが、記憶するためにかかった労力は段違いでしょう。
最初のものは0から9が2回繰り返されているだけですので、記憶するのは難しくありません。
しかし2つ目の方は意味不明な数字の羅列であり、これを記憶するのは相当な労力が必要だったことと思います。
このように人間は「意味」があるものを覚えるのは得意な反面で、「意味がないもの」を記憶するのは非常に苦手であるという特徴が御座います。
ちなみに先ほどの2つ目の数字は「フィボナッチ数列」という数列であり、この数列の意味をご存知の方は2つ目の数字も簡単に覚えることが出来たことでしょう。
さて、人間の記憶のメカニズムはまだまだ解明されていないことが多いのですが、それでも人間がどのようなものをよく覚えるのかということはある程度判明しております。
まず1つ目が意味。先ほどの数字の例が分かりやすいかと思いますが、人間は意味の有無で記憶のしやすさが大きく変わります。
他にも重要な要素としては「長い期間、何度も何度も繰り返す」というものも挙げられるでしょう。
例えば英単語を100回音読するのであれば、1日で100回音読するよりも1日1回を100日かけて行った方が記憶に定着しやすいことが分かっております。
また「名前をつける」ということも非常に重要な要素でしょう。
例えば「1582年、明智光秀が織田信長を暗殺した」という出来事を「本能寺の変」として覚えると記憶は格段に向上します。抽象的なイメージに名前をつけることによって、人間の記憶は定着しやすくなるのです。
トラウマ
ご質問者様が子供の頃のトラウマを思い出すとき、ご質問者様の脳内でどのような記憶が呼び起こされるでしょうか?
もちろん過去の悲しい思い出を思い出されることでしょう。しかしそれとは別に「私は子供の頃にトラウマがある」という言葉も脳裏を過るのではないでしょうか。
トラウマというのは非常に便利な言葉で御座います。悲しい思い出や辛かった思い出をそのまま覚えておくのは非常に大変なことで御座いますが、「トラウマ」という言葉を使えばわずか4文字でそのことを記憶し続けることが出来るのです。
そして何度も何度もトラウマという言葉を思い出すことによって、ご質問者様の中でトラウマという言葉は明確に記憶に定着してしまう。私は何もご質問者様にはトラウマがないとか、トラウマは甘えなどと言いたいわけでは御座いません。
嫌な記憶を忘れるためには「トラウマ」という言葉を使わない方が良いのではないか、とお伝えしたいので御座います。
恐怖や苦痛という感情に「トラウマ」という名前を与え「心の傷」という分かりやすいイメージを与え、ことあるごとに「トラウマ」という言葉を耳にしていたら、その記憶を心の中で定着させてしまうことになりません。
嘘も100回つけば本当になる
ご質問者様に辛い過去があるのは間違いありません。
もしかしたらそれはトラウマになっているかもしれません。
私はそれを否定するつもりは御座いません。
しかし、もしもご質問者様が前に進みたいと思うのであれば、その記憶に「トラウマ」ではない名前をつけてみてくださいませ。
私の記憶などご質問者様の辛い過去と比較できるようなものではないかもしれませんが、私は小学校高学年の時に上級生からイジメられておりました。腕にアザが残り母親から心配されたことも、教室に上級生がやってきて呼び出されたことも御座います。
もしかしたら、あの記憶も私のトラウマになっていたかもしれません。
しかし、幸いなことに私はその記憶に「トラウマ」という名前を付けませんでした。
私が付けた名前は「上級生から目をつけられたけど、果敢に立ち向かうかっこいい俺」というポジティブな名前で御座います。
もう20年も前のことなのできちんと覚えておりませんが、おそらく私は上級生に果敢に立ち向かってなどいなかったでしょう。しかしそんなポジティブな名前をつけたばっかりに、私の記憶の中に残っている小学5年生の私は6年生の暴力に屈せず、相手に歯形を残しておりました。多分それは嘘なのですが、嘘も100回つけばどっちが本当か分からなくなるもので御座います。
ただ何が真実であったにせよ、そんな名前をつけたおかげで私の中であの思い出がトラウマにならなかったのは間違いありません。
今からでも遅くはありません。
ご質問者様のその思い出に、何か別の名前をつけてみてくださいませ。