正論戦争

 

【例えばツイッターなどではよく「残業代をしっかりと払い、福利厚生をしっかりすれば業績が向上する。それをしたら潰れる企業はそもそも潰れるべき」みたいな「正論」が御座いますが、間違いなく正論でしょう。

 

全くもって正論で御座いますね、そんな企業は潰れるべきでしょうね。

 

多くの企業が倒産し、日本経済は徹底的に落ち込み再就職もままならないでしょうね。

 

一体その正論で、何人の職を奪い、その家族の食を奪い、そして何人を殺すおつもりですか?

長い目で見ればそれが正しいのかも知れませんが、その長い目で物事が変わるための「痛み」を自分が受けるとなったら誰もが怒るのです。

自分の次の世代がやればいい、と仰ることでしょう。】

 

 

 

 

この【】内の文章こそが相手を叩き潰す正論で御座います。

普通の大人は「日本のブラック企業が簡単に福利厚生を充実させるなんてことは出来ないということを知っているけど、日々の生活が辛いからせめてネットでは自分の会社の悪口を言わせてくれ」と思って「福利厚生残業代をしっかりしろ!」と言っているのです。

それを私が【】の正論で叩き潰してしまったら、そんなもの全力で私に食ってかかってくるに決まっているではありませんか。どっちが正しいとか、どっちが正論とか、そんなことはどうでもいいのです。

 

ブラック企業を潰せ!という内容を「正論」で主張したら、ブラック企業の経営者の皆様が「死に物狂い」で社員と敵対します。

逆に「ブラックにいる社員が悪いんだ!」という内容を「正論」で主張したら、今度はその社員の皆様が「死に物狂い」で戦いを仕掛けてくる。

 

私は別にどちらの肩を持つわけではないのですが、どちらにも「相手を正論で追い詰めるな」と言いたいのです。

仕事ですからお互いに多少戦うのは仕方がありませんが、正論で相手を追い詰めてはいけない。

正論は相手の逃げ道を奪い、死に物狂いにさせてしまう愚策です。

そんなことをしても誰も何も得をしない。待っているのはお互いの壊滅で御座います。

 

正論を振りかざし、相手を追い詰めていいのは、相手を全面戦争で徹底的に叩き潰す予定の時だけ。

全員を叩き潰すつもりなら、相手が食ってかかって来ようと構いませんから正論を振りかざしても良いでしょう。

 

例えば同じく第二次世界大戦の中で、1942年に日本がアメリカとの戦争に突入した原因は「ハルノート」というコーデル・ハルという政治家が提案した交渉が決定的でした。これは正論かどうかはともかく、日本を徹底的に追い詰める内容でしたが、そもそもアメリカは「日本が追い詰められて、アメリカに攻撃を仕掛けること」を望んでいたからこそ、この追い込みを行ったのです。

 

逆に太平洋戦争後の統治が、ヴェルサイユ条約と比較すれば極めて甘かったのは、追い詰めると何をしでかすか分からない、ということをきちんと理解していたからではないでしょうか。

冷戦という事情もありましたが、それでも追い込みすぎはダメということを歴史から理解していたのだと思います。

 

繰り返しになりますが、正論は相手の逃げ道を潰し、相手を死にものぐるいにさせる愚策中の愚策です。相手を潰すことが出来るかもしれませんが、こちらもまた多大な被害を被ることを避けては通れない。それどころかこちらが壊滅的な被害を受けて叩き潰されてしまう可能性だって十分にあるのです。

三面方位と黄金の橋

ところで先ほどお伝えした窮寇勿迫という戦術で御座いますが、これは派生すると三面包囲という作戦に発展致します。

三面包囲とはその名の通り「敵の三方を包囲する」ということ。三方を包囲するということは、逆に言えば一方残っています。

当然敵はそこから逃げることが出来るのですが、この作戦の目的は何でしょうか。

 

この作戦が極めて成功した例として「モヒの戦い」という戦いが挙げられます。

モヒの戦いとは植民地支配を抜けば世界最大の領土を誇ったモンゴル帝国とハンガリーの戦いであり、モンゴル軍が使用した黄金の橋とも呼ばれる戦略でハンガリー軍を全滅させました。

 

簡単に言うと、モンゴル軍はハンガリー軍を包囲した後、一箇所だけ包囲を解いたのです。すると言うまでもなくハンガリー軍はその部分から全力で逃げ出そうとします。

 

11 件のコメント

  • 途中まで感心して読んでいましたがブラック企業を非難するのは悪手だと正論をかざした所で読むのを止めました

  • ためになりました
    ネットだと匿名で正論を振りかざせますもんね…
    相手がどう受け取るかお構いなしに

  • 相手が退職直前にも関わらず真っ当な引継ぎをしない社員だったり、職務を何の相談もなく投げ出すような社員だったりした場合、逃げられる前に正論で徹底的に追い詰めなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

  • 非常に興味深く読ませていただきました。わたしも以前、何故正論はダメなのだろうかと考えたことがあります。
    私なりの結論は、正論は平等。友人に対しても、友人の敵に対しても。友人関係においては友人の肩を持つべきなので、正論は適切でない。でした。
    あと、正義論とかの宿命なのですが、現状への批判ないし批判を基礎とした論になりがちだということも疎まれる原因だとも思いました。
    でも、なるほど、相手を追い詰めるとろくなことはないというのも、ほんとうにそうですね。人は図星をつかれると怒りますから。

  • ハーグ陸戦協定の基本的な考え方ですね。
    相手を追い詰めすぎるな。追い詰めると、逆に、統治者が個人的な地位を守るために和平が遅れてしまうので、ほどほどにしておけと言われてます。残念なことに、今では、見向きもされてませんが。

    個人的には正論と言っても、論理的に正しいだけで、裏には何らかの感情が隠れていると思います。ブラック企業については、おっしゃられているようなことがあるのでしょう。私だけかも知れませんが、一面だけを指す正論に別の正論を合わせるようにしてます。
    ブラック企業を言うならブラック社員だっていますよ。ろくに働かないで給料だけとっていく連中のことです。こういう奴らがいるから仕事が進まない(残業代目当てにしている連中を含む)。それを合わせると、意外と、感情的には落ち着くことが多いです。

  • > 途中まで感心して読んでいましたがブラック企業を非難するのは悪手だと正論をかざした所で読むのを止めました

    分かる。それ言い出したら結局無法地帯を許す事になるし、現に死人が出てるのを看過する事になる。
    殲滅するしかない。

  • 正論を言うなっていう正論を振りかざしてませんか?
    もうすでにコメントの中であなたを敵視している方もいますよ?
    「こういう正論記事を書くとこうなる、反面教師にしよう」という話でしょうか

  • とても為になったです。
    もう少し読もうとリンクみてみたら。
    偽証罪に飛んだみたいです。
    中止犯の話は(刑法43条但書)
    ってなってるみたいです。

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