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行間を読む前に文章を読め

【ご質問】

私はこの春専門学校を卒業し、ディーラーで自動車整備士として働いている21歳の女です。

整備士の父に憧れ、小学生のころからの夢だったこの仕事は大変ではありますがやりがいがあり毎日充実しています。

ただ、「車が好きなわけではない」ことで周囲との考え方の差に悩んでいます。

先程も少し申し上げましたが、私が整備士になりたかったのは父親が自動車の整備で困っている人を助け感謝されている姿が格好良く、自分もそんな仕事がしたいと思ったことがきっかけで車が好きでたまらないとかレースが好きだとか言う理由はあまり持っていません。

専門学校では車好きも多くいたので、一緒に過ごす中で専門用語や魅力などの知識は一般の人よりはついたと思うのですが、趣味としてのめりこむ程好きにはなれず、整備という作業は好きなので仕事は仕事としてできたらいいと思っています。

しかし整備職は当然ですが基本男性社会で、女でありながら整備職を目指すならよっぽど車が好きなのだろうと思われ周囲からそのような話題を振られることがしばしばありますが、話をしていくと熱量の差にがっかりされてしまいます。

好きってそんなに大事でしょうか。

私はこの仕事に責任と誇りを持って臨んでいるつもりですし、女だからこそ男性とは違ったアプローチでお客様に接して行こうというやる気は人一倍あります。

しかし、先日尊敬している先輩が「あいつは車に興味ないのになんで来たのか」と話しているのを聞いてしまいとても悲しくなりました。

好きなことじゃなくても、本気で整備という仕事に向き合っているんだと信頼されるには、何が必要なのでしょうか。

サービス業に従事する人間として何が大切なのか、どうしたら認められるのか、是非上野様の御意見を聞かせていただきたいのです。

常に反語で解釈していれば正しく読むことが出来るのだろうか、いや出来るはずが無い。

ご質問誠に有難う御座います。

高校生の頃に、古文の授業で反語と疑問の区別に苦労された方も多いでしょう。

このごろはかやうなることやは聞ゆる

枕草子より

この「やは」は反語の「やは」であり、現代語訳すると「この頃はこのようなことを耳にするだろうか、いや耳にすることはない」という意味になります。

いにしへもかくやは人のまどひけむ

源氏物語より

一方でこちらの「やは」は疑問の「やは」であり、現代語訳すると「昔の人もこのように迷ったのだろうか」というものになります。

枕草子の「やは」は反語なのに、源氏物語の「やは」は疑問というのは、なかなか理不尽なものでしょう。

それでは古文の反語と疑問は一体どのように見分ければ良いのでしょうか。

一部の例外を除けば、これは文脈で判断するしか見極める方法は御座いません。

例えば先ほどの源氏物語の場合、イケメンヤリチンこと光源氏が夕顔をナンパしてラブホまで来てるくせに「昔の人もこんな不安な気持ちになったのかな……僕もこんなこと初めてだから不安なんだ」とメンヘラムーブをかましているシーンなので反語にすると訳が分からなくなってしまいます。

このように反語か疑問かを判断するためには前後の文脈を考えなくてはなりません。

上野
ちなみに光源氏はこのメンヘラポエムを歌ったあと、すかさず「ところで君も初めて?」と質問をしています
一条
ガチクソ野郎じゃん。ちなみに夕顔はなんて答えたんですか?
上野
夕顔もメンヘラポエムで返しました。その解釈は諸説あるのですが個人的には「貴方”も”どうせ昼にはいなくなっているんでしょ?」という解釈を推してます。

過剰に反語認定をしていないだろうか、いやしているだろう

反語は現代でも使われる表現手法で御座いますが、反語と疑問を見極めなければコミュニケーションに重大な齟齬が生まれてしまうのは間違いありません。なにせ反語には「反」という漢字が使われているように、意味が180度逆になってしまうのです。

それでは今回のご質問に話を戻しましょう。

ご質問者様は先輩方の「あいつは車に興味ないのになんで来たのか」という言葉に傷ついていらっしゃるようですが、おそらくこれはご質問者様がこの言葉を反語として捉えてしまったからかと思います。つまり「あいつは車に興味ないのになんで来たのか、いや興味がないのなら来て良いはずがない※1と解釈されたのでしょう。

しかし「あいつは車に興味ないのになんで来たのか」が疑問なのか反語なのかは前後の文脈を考えなくてはなりません。もしもこの言葉の後に「だから早く辞めてほしい」とでも続いたのであれば反語表現かもしれませんが、おそらくそんな言葉が続いたという訳でもないでしょう。それならばこれは反語ではなく疑問と考えるのが自然で御座います。

つまり先輩方は単純にどうしてご質問者様がこの業界に来たのか疑問に思っているだけに過ぎません。ご質問者様も仰る通り、自動車整備業は圧倒的な男社会。そんな業界に車が好きな訳でもない女性が突然やって来れば疑問に思わない方が難しいでしょう。

失礼ながらご質問者様は先輩方の言葉を勝手に反語認定しているようにしか思えません。

ありもしない反語部分を勝手に想像して勝手に落ち込んでいるので御座います。

おそらくお父様の話は先輩方にされていないことと思いますが、その話を先輩に伝えれば一発で全て解決する問題に過ぎません。話してもいないのに、先輩方が全てを推察するなんてことがあり得るでしょうか。

車好きではないとガッカリされたのもそう。彼はきっとご質問者様にプリキュアの話をして話が合わなければ同じようにガッカリすることでしょう。逆にお伺いしたいのですが、ご質問者様は人と話が合わなくても一切落ち込まない鋼のメンタルを持っているとでも言うのでしょうか。

※1 厳密な意味では反語ではありません。

先輩に嫌われているのだろうか、いやそんなことはない

後輩「先輩!今度うちに女性社員が来るらしいっすよ!」

先輩「そうか、珍しいな。」

後輩「女性社員なんて初めてっすね。」

先輩「まぁ女の子はあんまり自動車整備なんて好きじゃないからな。貴重な人材だ。大切にするぞ。」

後輩「ういっす。」

先輩「それと彼女の前では風俗とパチンコの話題は無しだからな。」

後輩「やっぱりダメっすか?」

先輩「当たり前だろ!!」

後輩「でも何の話したらいいんすかね?」

先輩「うーん……まぁ、わざわざうちに来るくらいだし、車は好きなんじゃねえの?」

後輩「じゃあ車の話題ならいいっすか?」

先輩「そーだな。まぁ車が嫌いってことはねえだろ」

後輩「んじゃ、俺、行ってきます!」

 

15分後

 

後輩「先輩……ダメっす。あの子、あんま車のこと好きじゃないみたいっす」

先輩「まじか……てか車好きじゃないのに、なんでうちに来たんだ?」

後輩「マジで分かんないっす」

先輩「謎だな」

後輩「謎っすね」

 

 

おそらく先輩たちの間ではこんな会話が繰り広げられていたのでしょう。

自動車整備業界はご質問者様の仰る通り男社会。男性の先輩方からすれば、ほとんど初めてに近い女性社員であるご質問者様をどう扱えば良いのか困惑されることも多いのでしょう。だからこそ先輩方はご質問者様を後輩として大切に扱うために、出来る限りご質問者様のことを知っておきたいと思っているのではないでしょうか。

私は全ての状況を知っている訳では御座いませんので想像の域は出ませんが、先輩方はそうしてご質問者様のことを知ろうと努力をされているのだと思います。

彼らには敵意も憎しみも御座いません。私だって彼らの立場であれば「多分、車が好きなんだろうな」と想像することでしょう。「車に興味がないのに何で来たんだ?」という疑問は最もで、そこに問題があるとは思えません。

失礼ながら今回の件に関して言えば、単純に疑問を抱いているだけの発言をご質問者様が勝手に「攻撃」として捉えてしまっていることが問題なので御座います。

確かに「なんで?」という言葉は相手を攻撃する際に使われることもあるでしょう。しかし多くの場合においてはただの疑問なので御座います。ご質問者様だって先輩が妙にご機嫌だったら「何でご機嫌なんですか?」と思うことでしょう。そこに攻撃の意図はあるのでしょうか?

 

「お前は仕事に誇りがない」と誰も言っておりません。

「好きでもないのに来るな」と誰も言っておりません。

「お前は本気で仕事してない」と誰も言っておりません。

「車のことを好きになれ」と誰も言っておりません。

「車に興味ないお前など認めない」と誰も言っておりません。

ご質問者様はありもしない行間を勝手に読んで、そして勝手に落ち込んでいるに過ぎません。

お父様の話をすれば全て済む話なのです。

だいたい世の中で働く人間の98%くらいは自分の仕事内容が好きな訳ではありません。何せ私だって別にラブホテルが好きだからラブホテルで働いている訳でもないのですから。

ご質問文の行間を勝手に読んでいる私には偉そうに語る権利などあるのだろうか。

確かにコミュニケーションを取る上では行間を読むことも大切でしょう。

ですので行間や文脈を考えたりすることが不要とは言いません。それはそれで極めて重要な能力で御座います。

しかし行間を読み過ぎて自爆をしてしまっているご質問者様は、行間を読む前に文章を額面通り読むように気をつけた方が良いでしょう。

額面通りに読んで、どうしても意味が通じない場面になってようやく行間を考え始めれば良いのです。基本は額面、行間などそうそう読む必要はございません。

幸いにしてご質問者様はまだお若いので、これからいくらでも改善できることでしょう。しかしこのまま勝手に行間を読むとTwitterによくいる話が通じない人になってしまいかねません。

「りんごは美味しい」と言っているだけなのに「ブドウは不味いって言うんですか!!」と怒り出すタイプの方。ご質問者様も1度くらいは見たことがあるでしょう。このままではご質問者様もあのような方になってしまいかねません。

確かに行間が読めない人間は「空気が読めない」と言われることもあるでしょう。しかし行間を勝手に読む人間はそれよりも数段酷い言葉で後ろ指を刺されます。

まずは先輩方にお父様の話をしてみてくださいませ。それだけで先輩方に何の悪意もなかったことがお分かりになるでしょう。

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