ご質問
上野さんに伺いたいことがあり、ご相談いたします。お手透き際にご回答いただけますと幸いです。
「子どもは必要かどうか?」
という最近流行りの話題について伺います。
私は今年の6月に9歳歳上の男性と入籍しました。彼はバツイチで、先妻との子どもはおりません。また、10月から海外2年間渡航するため、現在別居をしています。
私は都内で妹と同居しながら彼の帰りを待つ予定です。
食事をしたり、二人でいるときに最近必ず話題になるのが「子どもは必要かどうか?」についてです。
結婚前もしばしば出ていた話題なのですが、現在そんなに欲しいわけでも、いらない訳でもありません。
彼も彼で、どちらでも良いと言っています。
お互いどちらでも良いので決着がつかず、話題として飽きてきました。
夫婦でよく話し合ってくださいと言われたらそれまでなのですが、上野さんはどうお考えですか。
よろしくお願いいたします。
28歳 女性
富士山は何県のもの?
ご質問誠に有難うございます。
私の母親は静岡の出身なのですが、そのせいもあり未だに富士山の領有権を主張しております。
静岡や山梨に住んでいない方からすれば心底どうでもいい話題だと思うのですが、静岡県と山梨県は「富士山は何県のものか」ということで永遠と議論を続けております。
実際、山梨と静岡の県境は「富士山の山頂あたり」にあり、県境は法的に明確に決まっておりません。
そのため山梨と静岡は未だに「富士山は我が県のものである」と主張を続けているのですが、実はこの問題は1951年に両県の知事が直接話し合うという形で決着が付いております、
それでは富士山は一体何県のものなのでしょうか。
正解はどちらのものでもないで御座います。
その話題に触れるな!
日本に県境が生まれてからというもの、静岡と山梨は富士山の領有権をめぐって血で血を洗う戦いを繰り広げておりました。
そのため先ほども申し上げた通り1951年に静岡と山梨の両県知事が直接話し合うというところにまで発展してしまったのですが、この会談で2人の県知事は意外な結論を下したのです。
その結論というのが「曖昧なまま放置して、2度とこの件に関して両県では会議をしない」というもの。
この結論は実に賢明なものだったことでしょう。
「富士山は〇〇県のもの」なんて結論を出してしまったら、富士山の領有権を奪われた県は黙っておりません。また富士山は山梨にとっても静岡にとっても貴重な観光資源であるため、片方の県のものにしてしまうと、富士山を奪われた県では甚大な観光被害が発生してしまうのです。
ですので両県知事は「曖昧なまま放置するし、2度とこの話題を持ち出さない」という極めて賢明な結論を下しました。この曖昧な結論を下したからこそ、未だに足柄サービスエリア(静岡県)や双葉サービスエリア(山梨県)では富士山グッズを販売することが出来ているので御座います。
決着をつけないという結論
世界の歴史を紐解くと決着をつけようとして大失敗した出来事に事欠きません。
キリストが食べたパンに酵母が入っていたかどうかという問題に結論を出そうとした結果、キリスト教は東方教会と西方教会に分裂しました。
ドイツが電報を送ったのかどうかという問題に結論を出した結果、ドイツはアメリカの参戦を許し敗北しました。
曖昧なままにしておけば良かったものを、きちんと答えを出してしまったばっかりに大問題になってしまった出来事は数知れません。
逆にのらりくらりと曖昧なままにした結果、良い方向に向かった出来事もたくさん御座います。
のらりくらりと曖昧にする方は決断を下していないわけでは御座いません。確固たる信念を持って「決断をしない」という決断を下しているので御座います。
それでは今回のご質問に戻りましょう。
子供が必要かどうかという問題は、各人がその結論を出せば良い問題でございますが、今回のご質問者様夫婦に関して言えば、お二人とも「どっちでもいい」と考えております。
これは決断が下せていないわけでは御座いません。
お二人とも明確に「どっちでもいい」という決断を下しているので御座います。
決断を下すというのは何も白黒はっきりさせるという意味では御座いません。「これは灰色である」という決断もまた、立派な決断の1つなので御座います。
もしもここで「子供はいらない」という決断をしてしまったら、将来ご質問者様が子供を欲しくなった時に言い出せなくなってしまうことでしょう。
逆にここで「子供は必要」という決断を下してしまったら、子供がいない自分たちをダメな夫婦として卑下してしまうかも知れません。
どっちでもいい問題は「どっちでもいい」という決断を下せば良いのです。
どっちでもいい問題をわざわざはっきりさせて結論を出してしまうと、それまでは無かった問題を生み出すことになってしまうことでしょう。
そんな無意味な結論を出す必要は御座いません。
正々堂々自信を持って灰色の決断を下して頂ければ幸いです。