注意
話の都合上「看板持ち」を誰でも出来る仕事と述べておりますが、誰でも出来るからと言って否定したりバカにする意図は御座いませんので、ご了承頂ければ幸いです。
ホテルでの仕事が終わり駅に向かうと、駅前で漫画喫茶の看板を持っている方がいらっしゃいました。
会議室にあるような安いパイプ椅子に座り、ベニヤか何かで作られた安っぽい漫画喫茶の看板。
「◯◯駅徒歩1分。1時間100円!」
そんなことが書かれたよく見かける看板です。
おそらくは時給1000円前後のバイトでしょう。住宅展示場や就職説明会などの看板持ちであれば多少違うのかも知れませんが、漫画喫茶の看板です。道ゆく人から「お店はどこ?」と聞かれることもないようなただ立っているだけのバイト。失礼な物言いになりますが、体力さえあれば誰にだって出来る仕事であると思います。
さて、そんな毎日見かけている看板持ちで御座いますが、昨日は少しだけ様子が違いました。
看板持ちが若い女性だったのです。
歳は恐らく23、4。絶世の美人とは言いませんが、それなりに顔立ちの整った綺麗な方でした。
時給1000円なのか1200円なのかは分かりませんが、20代の女性が看板持ちのバイトをしていたのです。
彼女が何故この看板の仕事に辿り着いたのかは私には分かりません。
あの手のバイトは長くても2ヶ月くらいの契約であり、その多くが日雇いのバイトだそうです。ですのでたまたまお金が足りなくなった女性が1日のバイトとして行ったのかも知れませんし、仕事が見つからなくて苦しんでいる女性が藁にもすがる思いでそのバイトを選択したのかも知れません。
ですが、その理由はともかくとして私はそんな女性の姿を見て、こう思いました。
また1つ無能な男の仕事が無くなった、と。
看板持ちの男たち
サンドウィッチマンという仕事が御座います。
漫才コンビのことではなく、体の前後に広告の板を装着して街に立っているアルバイトのことで御座います。新宿や池袋などの繁華街には何人もサンドウィッチマンがいるので皆様も1度くらいは見かけたことがあるのではないでしょうか?
このサンドウィッチマンと看板持ちというのは圧倒的に男性の多い職場でした。お葬式の案内やお堅い企業の説明会などであればこの限りでは御座いませんが、漫画喫茶やカラオケ、個室ビデオ屋などの産業の看板持ちは得てして男性が多い職場だったと言えるでしょう。
これは何も男性にしか出来ない仕事だ、という訳では御座いません。
誰でも出来る仕事だから、他に仕事のない男性がその仕事を担っていたのです。
確かに深夜のサンドウィッチマンは面倒な酔っ払いに絡まれることも多いので女性が行うには危険な仕事かも知れませんが、日中の駅前の看板持ちなんて概ね誰にだって出来る仕事でしょう。座ったままで良い場合もあるようなので長時間立っていることが出来ない方でも出来るような仕事です。人から話しかけられることもほとんどないのでコミュニケーション能力だってほぼ不要です。
そもそもあのバイトは道路交通法と土地利用権の問題で存在しているに過ぎないと言っても過言ではありません。本来なら道に看板を置いておきたいところですが、それだと法的に色々と面倒なので人が持っているだけの話。企業側からすればのぼり用のウェイト程度の仕事しか期待されていません。
スキルのないおじさんの仕事
正社員はともかく、バイトであれば若い女性は最も重宝される存在です。
アルバイトで求められる能力の多くは若い女性が得意なジャンル。特に接客業であれば若い女性以上にニーズの高い労働者はおりません。
若い男性もそこそこ重宝をされる存在でしょう。
引越しを筆頭に「とりあえず体力」な職場では若い男性のニーズは非常に高いのです。また若い女性ほどでは無いにしても接客業でもそこそこのニーズがあるのは間違いありません。
40代以降の女性もアルバイトではそれなりにニーズが御座います。
仕事の丁寧さに関してはおばちゃんは最も優秀です。また若いバイトと比べると「長期間の戦力として見込める」というところも企業としては嬉しいところ。
実際、私のホテルでも最も現場に詳しいのはベテランの女性バイトのスタッフです。かれこれ10年以上働いている方の現場知識は数年働いただけの我々社員の比では御座いません。
そしてアルバイトで最も需要の無い存在。
それが40代以降の男性です。
若い人や女性が応募をしてくれないようなバイトくらいしか彼らに仕事はありません。
接客では若い女性に劣り、体力では若い男性に歯が立たず、おばちゃん軍と比較しても丁寧さや組織力では勝負にならないでしょう。
それだけならばまだしも、雇う側の立場としても40代以降の男性は使い勝手が悪いのは間違いありません。
ブーブー文句を言いながらも何だかんだで仕事はちゃんとやるおばちゃんと比較して、おじさんは文句を言うし仕事の質も悪い。
彼らが仕事を得るためにはスキルや経験しか無いのです。しかしそんなものがある男性はそもそもバイトを探すような状況になりません。
スキルも経験もなく、そのくせ文句は止まらない。決して真面目でもなく、偉そうに講釈を垂れる。
そんな男たちを雇いたい企業など存在しない。
誰も彼らを欲しない。
だからこそ誰もやりたくないような仕事をそんな男性たちは担っていたのです。