最大の違和感【写真がダサい】

上野
この写真は私の知人女性が某SNSにアップしていた画像なのですが、今回の連載が始まったきっかけになった画像です。

一条
そうなんですか?

上野
彼女がアップしたこの画像を見て、すごく違和感を覚えたんです。いわゆる「インスタ映え(インスタで人気が出そうな写真のこと)」とは完全に無縁なこの画像。一体なぜ彼女がこの画像をアップしたのかがどうしても分かりませんでした。

一条
確かに、全然綺麗な写真じゃないですよね……

上野
彼女がこの写真を「撮った」だけなら、別におかしいことではありません。ですがもしもSNSにアップしようと思って写真を撮ったなら、こんな写真は削除して取り直しをするでしょう。

一条
そうですね。

上野
つまり、今回の彼女は「下手な写真なのにアップした」のではなく「下手な写真をあえてアップした」と考えなくてはならないのかもしれません。

一条
下手な写真をわざわざアップするなんてことあるんですか?
この写真はなぜダサいのか?

上野
そもそも一条くん。この写真は一体なぜダサいんですか?

一条
ほら、普通最近の女の子がアップする画像って

一条
なんかこんな感じじゃないですか

上野
そうですね。この画像はフィルター加工をしたり、スタンプが押されていたりしておしゃれな感じがします。もちろんそれも串カツの写真がダサい理由の1つではあるのですが、それ以上におかしな点が1つあるんですよ。

一条
ん〜?

上野
アングルです。

一条
アングル?
アングルミス

上野
例えばこの写真を見てください

一条
美味しそう……

上野
注目すべきはそこではありません。この写真の「主役」は一体何ですか?

一条
そりゃ魚ですよ。美味しそうですね〜

上野
その通りです。普通、写真を撮るときは「メイン」のものを中心にし、大きく写します。もちろん芸術的センスでそうならないことも御座いますが、基本的には「主役は中心」と考えて問題ないでしょう。
【芸術的センスで画像の中心にメインがない写真の例】
明らかに左側に寄っている。ただし右側に物を置かずにバランスを取っている。
話は完全に脱線しますが、子供の頃「ポケモンスナップ」というゲームで、非常にかっこいいアングルを追求した結果、オーキド博士から「惜しいのう」と言われて「×2」をして貰えなかった苦々しい記憶が御座います。
※ポケモンスナップ
ポケモンの写真を撮り、その点数を競うゲーム。オーキド博士はどれだけセンスが良くても画像の中心にポケモンが写っていないと「テクニック」のところで「おおっと、惜しいのう」と言って、点数を倍にしてくれない。ヒトデマンは音ゲー。

上野
さて、それでは元画像を見てみましょう

上野
確かに魚型の串カツだけに目を向ければ画像の中心に御座いますが、今回の場合「3本の串カツ」が主役だと考えるべきでしょう。そう考えると主役が随分と左側に寄っていると思いませんか?

一条
確かに……お芋なんて見切れてますもんね。

上野
それにお皿も見切れています。かなりバランスが悪いアングルになっていると言えるでしょう。

一条
何でこんなアングルになったんですかね?

上野
君に1つマジシャンの格言をお教えてあげましょう

一条
???

上野
マジシャンが右手を出したら、左手を見ろ

一条
どゆ意味?

上野
要するに反対側を見ろってことですよ
写したいものがあった?

上野
例えば、もしもこの辺に何か写したいものがあったのであれば、このようなアングルになることも納得が出来ます

一条
でも、この辺に特に何もないですよね

上野
ええ、網のようなものは御座いますが、それを写したいとも思えません。

一条
それじゃあ、一体何がしたかったんですか?

上野
アングルがこんなに右に寄っているにも関わらず、右側に写したいものが見当たらないということは、今度はもう一度逆について考えてみれば良いのです。

一条
左?

上野
そう。それも画面に見切れているエリアを考えて見ましょう。今回写真は妙なところで見切れていますが、これは「その先に見せたくない”何か”」があるとも考えられませんか?

写真の左の位置に”何か”写したくないものがある

一条
写したくないもの?

上野
例えば「人の足」「一緒に来ている人の私物」などが「写したくないもの」に該当するでしょう。この段階では何とも言えませんが、この写真は左側に写したくない何かがあった、と考えるとアングルの不自然さが理解できます。

上野
左側にある「写したくない何か」を避けるあまりこんなにも偏ったアングルになってしまったということ。その写したくないもの、が何かは分かりませんが”何か”があったのです。
食べかけの串カツ

上野
ところで一条くん。もしも君が食事の写真を撮るなら、どのタイミングで写真を撮りますか

一条
そりゃ食べる前に撮りますよ。

上野
そうですよね。でもこの写真「食べる前」の写真じゃないんですよ

一条
え?

上野
ほら、ここ。

上野
よく見ると真ん中の串カツの中身が無くなっているんです。これは衣を剥がして食べたのでしょう。衣は高カロリーなので外して食べる女性もいらっしゃいますからね。

一条
ほんとだ……

上野
しかし、ここで気になるのは「どうして食前に写真を撮らなかったのか?」ということ。もちろん単純に「食べる前に撮り忘れた」という可能性も御座いますが、今回は別の可能性を考えてみましょう。

一条
うーん。食前に撮らない理由なんて他にありますか?

上野
そういうときは違った視点で考えると良いですよ。食前に「撮らなかった」のではなく「撮れなかった」としたら、どんな理由がありますか?

一条
……???

上野
一条君。もしも君が誰か偉くて気難しそうな人と会食をしたとしたら、その時に料理の写真を撮りますか?

一条
さ、さすがに僕でも撮らないです。

上野
どうして?。

一条
だって相手に失礼じゃないですか

上野
そうですよね。 つまり「この人は写真を撮ったら怒るかも知れない……」という人と同席をしていると、当然ですがその人の前では写真を撮れません。ですので、そういう場合はその人がトイレか何かで席を立った時などにこっそりと写真を撮ることでしょう。そのためこのように中途半端なタイミングでの写真になったのかもしれません。

一条
あのー先輩

上野
何ですか?

一条
写真嫌いな人が席を立ったからと言って、普通その瞬間にこっそり写真を撮ろうとは思いませんよ。食前に嫌がられたらそれで諦めますって。それに「食事の写真」すら嫌がる偏屈な人なんてそんなにいますか?

上野
その通り! 自分が撮られるならまだしも、相手の女性が食事の写真を撮るくらいでカリカリする人なんてそんなにいないでしょうし、逆にそんな人がいるにも関わらず、ちょっと目を離した隙に写真を撮ろうと思うほど写真を撮りたがる人もそうそういないでしょう。ですのでそんな2人がいるとすれば「性格」の問題ではなく「そうならなくてはならない事情」があったと考えるべきなのです。

一条
事情があった?

上野
つまり好みや嗜好の問題ではなく、今回の女性には「撮らなくてはいけない理由」があり、逆に相手の方には「撮られたくない理由」があったということ。単純に「写真好き・写真嫌い」の話ではなく、もっと実利的な問題があったと考えた方が良いでしょう。

一条
……!!なるほど……

上野
しかしもし何かしらの事情でそんな不可解な状況が発生したとしたら、それは1つの非常に重要な情報を得ることが出来ますね。

一条
重要な情報?

上野
一方は食事の写真すら嫌がり、一方は相手に隠れてまで撮りたがるのですよ?。つまり2人の事情や立場に大きな差が存在するということです。

上野
この状況何か思い浮かびませんか?

一条
えーっと……
- 写っては困る何かが存在する状況
- 相手は写真を極端に嫌がる
- 女性は写真を極端に撮りたがる。しかもSNSにアップしてしまう。
- 2人の立場や事情が明確に異なる
- そんな2人が食事をしている

一条
この要素に該当する状況を考えろってことですよね。

上野
はい

上野
ポイントは2と3ですね。この2つを合わせて考えると「相手の人はネットに写真をアップされると困る。」「今回の女性はアップしたい」と考えることも出来ます。

一条
……!?

一条
ファンとアイドル!!

上野
ええ、そうです。もちろんこれだけで「ファンとアイドル」と断言するのは強引ですが、もしもこの写真に写っている2人が「ファン」と「アイドル」というような関係性であったなら、色々な謎が解決してくるんです。