「別れたいのに別れられない」
「未来なんてないことは分かっているけど、それでもやめられない」
別れた方が良いなんていうことは自分でも十分に分かってはいるけれど、それでもどうしてもそれを決断することが出来ないとお悩みの方は多いでしょう。
私の友人の友人であるTさんもまさにそんな女性で御座いました。
Tさんは昨年の11月頃に街でナンパをされ、その男性とその日のうちに行為を致してしまいました。それだけでも大変な問題ではあるのですが、さらに問題だったのはこの後。
人生で初めてのセックスをナンパで経験してしまったTさんはその男性のことを好きになってしまい、それから半年以上その男性に人生を捧げ続けました。
もちろん恋愛のきっかけなんていうものはナンパだろうがお見合いだろうが友人の紹介だろうが大した問題は御座いません。
しかしTさんの場合、相手の男性は完全にナンパ目的でありTさんと付き合う気なんて毛頭なかったのです。
ですのでTさんがどれほど彼に尽くそうとも、彼と付き合えることは御座いません。それでもその男性が振ってくれるのであればまだ良いのですが、こういうクズ男というのはその辺りについては優秀なもの。
「今は恋愛する気になれない」
「仕事が忙しくて……」
「Tとは今のままの関係が良いんだ」
というような生殺しのセリフを吐き続け、Tさんを拘束し続けたのです。
付き合いはしないがセックスはする。
付き合いはしないが金はせびる。
付き合いはしないが拘束はする。
ある意味で清々しいまでのクズ男では御座いますが、Tさんの人生を考えればこんな男に構っている暇は御座いません。
というわけで、私と友人はTさんの救出作戦を計画し、そして幸運にも彼女をこの男の魔の手から救い出すことが出来たのでその過程をご紹介させて頂ければと思います。
4月某日:友人からの相談
ことの発端は4月某日。
友人からTさんについて相談を受けたことに始まります。
Tさんがナンパでセックスをしたのは昨年の11月のことで御座いましたが、それから半年ほどTさんの友人たちはあらゆる手段で彼女を目覚めさせようと努力を試みました。
しかし彼女の症状は悪化する一方。友人たちに「〇〇君って凄いんだよ!」「〇〇君がエッチしてくれた!」というようなLINEを送るなどという状態まで悪化してしまったため、私に白羽の矢が立ったそうです。
とは言え私はこの男性はもちろんTさんとも面識がなかったので、まずは今流行のオンライン飲み会をTと私を含めた4人ですることになりました。
実際に話してみると、Tさんもまた彼との縁を切りたいと悩んでいるとのこと。
正確に言えば「このままでも未来がないのは分かりきっているものの、彼のことが好きだから今の関係を変えたくない」という非常にありがちな状況で御座いました。
彼と付き合うことも出来ず、かと言って関係を終わらせる勇気もない。
客観的に見ればセフレでしかない関係を維持することに彼女は躍起になっていたのです。
1回目のオンライン飲み会で話を聞いて、私はTさんの置かれている状況をある程度理解しました。
言い方は悪くなりますが、男性とお付き合いをしたことがなかったTさんは人生で初めてセックスをしてしまったナンパ男に対しての執着心と恋心を混同してしまっていたのでしょう。
極端に言えば、彼女は「別れたくない」と思っていたのではなく「別れてはいけない」と思っていたのです。
男性経験がなく、人並み以上に貞操概念が強いと思い込んでいる彼女は、自分が遊びのセックスをしたということが認められない。だからこそセックスをしたナンパ男のことを「本気で好きであった」と思い込まなくてはならないように考えているように感じました。
とは言え彼女自身もまたナンパ男が人間的にクズであることは重々に承知をしております。しかし彼のことを好きという気持ちも彼女にはあるのです。
それではそんな彼女をナンパ男から引き離すためにはどうすれば良いのでしょうか。
4月末:2回目のオンライン飲み会
ズブズブの関係に苦しんでいる方は、必ずしもその恋が成就しないことに苦しんでいるわけでは御座いません。
もちろん最高の結果が「恋の成就」であることは間違いありませんが、恋が終わるというのもそれはそれで良い結果なのです。彼らが苦しんでいる最大の原因は恋が上手くいかないことではなく、いつまで経っても現状が何も変わらないことでしょう。
相手から「お前なんか嫌いだ、2度と話しかけるな」とでも言って貰えれば、ズブズブの関係に苦しんでいる方は救われるのです。確かにその瞬間は辛いですが、ズブズブの関係で苦しみ続けることに比べれば相手からスパッと振ってくれる方が楽なものでしょう。
しかし例えそちらの方が良いと分かってはいても、好きな人に対して関係を終わらせるようなことを言うことは出来ません。
Tさんも相手の男性が絶対に自分と付き合ってくれないことは察していましたが、それでも告白をしたら今の関係が終わってしまうかもしれないという不安から、告白をすることが出来ずにおりました。
さて、そんなわけで開催された2回目のオンライン飲み会。メンバーは前回と同じ4人。
2回目は1回目と異なり、Tさんの友人たちがかなり厳しくTさんに注意をしておりました。
「早くそいつと縁を切れ」
「もしくは告白して玉砕しろ」
「そいつと一緒にいても未来はない」
そんな言葉が飛び交うなかなかに殺伐とした飲み会になっておりました。
Tさんも好きな人のことを「クズ男」とか「ゴミ」と言われてかなり傷心気味。しかしそれでもTさんがそのナンパ男から距離を取るようには到底見えませんでした。
そこで私が考えたのが代筆という手段。
結果として、この方法がかなり上手くいったのでご紹介させて頂きます。
告白文を代筆
Tさんの最大の問題は何も行動が出来なくなってしまっているということで御座います。
彼に別れを切り出す勇気もなければ、彼に告白する勇気もない。
地獄へ続くぬるま湯に浸っていながら、どちらの行動も取れないことこそがTさんの最大の問題で御座いました。
しかし、事情はどうあれナンパ男のことが好きなTさんが「彼に別れを告げる」なんていう手段を取れるはずがありません。どれほど相手との関係に未来がないと分かっていても、それでも好きな相手に別れを告げるなんていうことは普通の人間には出来ないのです。
それならば彼に告白をするしかありません。
もちろん奇跡的な偶然が重なり、彼が「付き合う」と言うのであればそれはそれで問題は解決します。一方で相手から「お前と付き合う気はない」という言葉を引き出せたのであれば、それはそれで諦めもつくものでしょう。どう考えても不可能な恋なのにTさんがナンパ男を諦められないのは「もしかしたら彼と付き合えるかもしれない」という希望がそこにあるからなのです。
その希望は確かに微かなものですが、例え微かであったとしても希望があれば人はそれに執着をしてしまうのです。だからこそ彼から明確に「付き合わない」という言葉を引き出せれば、そのわずかな希望さえも断ち切られ諦めることが出来るのです。
しかし「告白をすれば解決する」と言ってもそう簡単に告白が出来るのであれば誰も苦労は致しません。
それが最悪の手段だと分かっていても、それでもなお告白をするという決断をすることが出来るほど人は強い生き物ではないのです。
それならばどうすればTさんは告白をすることが出来るか。
決断をせずに告白をさせるしかありません。
まず私はナンパ男とTさんの馴れ初めを詳しく聞き、その上でTさんの気持ちを深く質問しました。そこでTさんの気持ちに意見をする必要は御座いません。徹底的に聞いて彼女の気持ちを知ることが重要で御座います。
そして彼女の気持ちを聞き終えたら、その気持ちを多分に織り込んで「告白文」を作成いたしました。
告白文の内容は彼女の個人的な話を含みますのでここでは詳しくは書けませんが、内容を要約すると以下のようなものになります。
- 私はあなたのことが好き
- あなたと出会ってから、人生が変わった
- 顔も、性格も、ちょっと意地悪なところも、本当は優しいところも大好き
- だけど、今こうして曖昧な関係であることが辛い
- だから、あなたと恋人になりたい
- もしもなれないなら、私は身を引く
出来るかぎり彼女の気持ちを踏まえて告白文を作成しました。
そしてこの告白文を彼女に送り、彼女にこう言いました。
「男性の気持ちでこの告白文を受け取ってみたいから、この文面をそのまま私にLINEしてくれませんか?」
ちなみにオンライン飲み会は最近話題のzoomでしておりました。
私は送る気なんてなかった
私が書いた告白文をzoomでTさんに送り、それをTさんから私にLINEで送ってもらいました。
これはTさんに「告白文をLINEで送る」という経験をさせるため。
勿論相手が私ですし、そもそもこの告白文を書いた張本人なのですからTさんは気軽に私に告白文を送ってくださいました。
これでまずはハードル1をクリア。相手が第三者の私とは言え、Tさんは「告白文を送る」ということを実行したのです。
次にTさんに「その告白文を友達に送ってみて欲しい。内容が変じゃないか意見を聞きたいから」と言い、その告白文を数人の友人に送ってもらいました。
もしも告白文を書いたのがTさん本人であれば、Tさんは友人に告白文を送ることなど出来なかったでしょう。しかしこの告白文を書いたのは私。例え友人から「クソダサイ」と言われたとしても、それは私が書いた文章がダサイのであって、Tさん自身の問題では御座いません。
ですのでその告白文について何と言われようともTさんは傷つくことがないのです。
結果は上々。幸いにして私が書いた告白文はTさんの友人からも「ええやん」という評価を得ることが出来ました。
この目的はこの告白文が良いものであると、Tさんに理解してもらうためで御座います。
Tさんが私のことを信用しているかどうかは分かりませんが、私の書いた告白文を友人に送ることでTさんは「この告白文はそこそこ良い」と信用することが出来たのです。
そして最後のフェイズが告白。
つまりこの告白文を件のナンパ男に送るというフェイズで御座います。
このフェイズを成功させるために、ここまでの仕込みがあったと言っても過言では御座いません。
まずこの告白文を書いたのは私なので、例え失敗してもそれは「私が書いた告白文」がダメなのであり、Tさんが悪いわけではありません。
またこの告白文は複数人から「ええやん」という評価のお墨付き。それなりに成功率がある告白文であるという安心感も御座います。
さらにさらに万が一失敗したとしても、Tさんには「ごめん!これ友達が勝手に書いたの!」という伝家の宝刀が残っております。
変なLINEが届いた後に「友達が勝手に送った」という謎のメッセージが届いた経験が皆様一度くらいはあるのではないでしょうか?
おそらくあれのほとんどは送った後に反省してついた嘘だとは思うのですが、今回のTさんの場合、嘘ではなく真実なのです。
仮にナンパ男から「ごめん」と言われても、Tさんには「これ、友達がいたずらで書いたやつだから!」という言い訳が残されております。なぜなら本当にその文章を書いたのは私なのですから。
と、このようにTさんがナンパ男に告白LINEをする言い訳はたくさん作っておきました。
しかし、ここまで言い訳を用意しても実際に送るのには最後の一押しが足りません。
そこで利用したのがLINEの取り消し機能。
今のLINEはメッセージを送っても、相手が見る前であればメッセージを消去することが可能で御座います。
というわけでそれを利用して私はTさんにこう提案しました。
「送ってからどうしても怖くなったら消せば良い」
実際に彼女に取り消し機能を見せて、本当に取り消せることを伝えてからこう伝えたのです。
大丈夫大丈夫、だって怖くなったら消せば良いんですから。
大丈夫大丈夫、この文章を書いたのは私だから最悪の場合「友達が書いた」って言えば良いんですから。
大丈夫大丈夫、みんなこの告白文が良いって言ってたでしょ?
飛び越えた後に戻る人はいない
決断とは崖から飛び降りるようなものであると私は考えています。
後ろから敵が迫っているので、このまま飛び降りなければ絶対に死ぬ。しかしそれでも崖から飛び降りる勇気が出ない。
どう考えても終わっている恋なのに決断が出来ない方というのはこんな状況に苦しんでいると私は考えます。
それでは実際に崖から飛び降りた人が、やっぱりやめたと言って崖を這い登り再び窮地に追い込まれることがあるでしょうか?
そんなことはまずあり得ません。決断が出来ない人は崖から飛び降りるのが怖いのです。それなのに1度飛び降りた後に、再び崖に登るなんていう狂行をするはずがありません。
ですので背中を蹴っ飛ばして崖から落としてしまえば、その人が再び登ってくることはないのです。
それこそが今回の狙いで御座いました。
例え取り消し機能があるとしても、1度飛び降りたTさんは絶対に取り消さない。
その自信が私には御座いました。
万が一、取り消したなら「本当に消せたでしょ?」と言ってもう1回飛び降りて貰えばいい。
この結果、Tさんはナンパ男に告白文をLINEして見事に振られました。
しかし相手から「貴方とは付き合わない」という言葉を引き出せたおかげでTさんの希望は絶たれ、翌日にはTさんの「あの男がどれほど酷かったか」という話で3回目のオンライン飲み会が開催されたのです。
決断なんか出来るわけがない
どれほど応援したところで、人は決断なんかそうそう出来ません。
特に自分が好きな人との関係を終わらせるかもしれない決断など、自分の力だけで出来るはずもないのです。
それならばどうすればいいか。
決断をせずに行動するしかありません。
言葉は悪くなりますが、Tさんは「全部上野が命令したことだ。全部上野が悪い」という言い訳が出来たからこそナンパ男にLINEをすることが出来たのでしょう。
そういう言い訳が決断には必要なのです。
ですのでもしも皆様の周りにTさんと同じような状況に苦しんでいる方がいらっしゃいましたら、今回の私の方法を1つの参考にして頂ければ幸いです。
どれほど応援しようが、自分の力で決断なんて出来るわけがありません。
決断できなくて苦しんでいる人に必要なのは、声援ではなく物理。
背中を蹴っ飛ばしてくれる人間か、もしくは手を引いて一緒に崖に飛び降りてくれる人が必要なのです。
偶然に賭ける
おそらくこの文章をお読みの方の中には、Tさんと同じように苦しんでいる方も多いでしょう。
別れた方がいいのは分かるけど決断はできない。
そんな方に1つ。オススメしたい方法が御座います。
まず「相手に送りたいけど送る勇気が出ない文章」を作成します。
告白でも別れを告げる文章でも何でも構いません。皆様が決断できずに苦しんでいるメッセージをメモ帳か何かで作成してくださいませ。
そうしたら、そのメッセージを相手とのLINEの「メッセージを入力」という箇所に入力します。
ここまでは誰でも出来ることでしょう。相手に送るわけではなく、ただ相手とのLINEの画面に入力をするだけで御座います。
これでおしまい。相手とLINEをする時はこの文章を消してからLINEをして、終わったらまたメモ帳に書いたメッセージをコピペで貼ってくださいませ。
ここまで出来れば、もう皆様は勇気を振り絞る必要も決断をする必要も御座いません。
「送信ボタン」を押す勇気なんて、誰にもないのです。
ですのであとは偶然に賭ければ良いでしょう。
何かの拍子で間違えて送ってしまう日を優雅に待っていればいいのです。それに万が一送ってしまっても、すぐに取り消せば何の問題もございません。
送信ボタンを押す勇気が出ないなら、そのボタンは偶然のミスに押して貰えばいい。
最後の最後は偶然に頼ってしまえばいいのです。例え1%しかない偶然であっても、回数をこなせばほぼ100%起こる必然になるのですから。